short story~秘密の花園~

□戯れ。
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「なぁ〜
なぁなぁなぁ〜ねね!

返事しぃや〜」

「はい。聞いてますよ!さゆみさん」
て、言いながら手の動きは止めず
まったくこちらは向いてくれない。

初日まであと数日。
ねね姫の「アクセサリー作りを手伝う会」と称し、
しーらんとれんたがねねちゃんちにお泊りする、ていうから乗っかった。


「なぁーちょっと休憩しぃ?
もう出来てるやん」

肝心のしーらんは既に眠気に負けて
別室の姫のベットでお休み中。

「出来てません!
コレも、コレも、もっとアレンジしなきゃっ」

なんて熱心なんや。
私はその横顔見てるだけで興奮するわ!

れんたといえば…奴も既に
ワイヤーとビーズ片手に
テレビの前で船を漕いでいる。

私とねねちゃんはリビングのテーブルで紅茶を飲みながら、
ねねちゃんだけが頑張ってる。

「さゆみさん、一番器用なんですから
見てないでなんとかして下さい!」

イヤや〜面倒〜っ
私はねねちゃんを見る為に来たの!
とは口には出さないけど。

れんたが完全に突っ伏したのを確認し
ねねちゃんの横へ移動する。

「なぁ、十分やと思うで?
ちえさんの横やから、て…
そんなに一生懸命にならんでも
ねねは十分にカワイイで?」

ねねちゃんが不思議そうな目の色で私を見る。
好きな女を揺さぶるのは楽しい。

「ちえさんな、彼女が出来たらしくって
浮かれっぱなしやで。
知ってる?
でもそれがまた芸に磨きをかけてるから
あの人はすごいわ〜」

思い通り、私の言葉を聞くなり
ねね姫は手に持っていたハサミをバタっとテーブルに置いた。

「その人、私より可愛いの?!
さゆみさんっ」

知らんわ。
「なんやの?
ねねはちえさん本命ちゃうやろ?
ヤキモチ?」

「違いますぅ!
女として、相手役としてっ
ちょっと悔しいんですぅっ」

ぷう、と膨れちゃって。
どんだけ可愛いねん!

「ちえさんの彼女は知らんけど、
私はねねより可愛い女はおらんと思うで?」

あ、赤くなった。

「さゆみさん、みんなにそんなこと言ってるでしょ。
私、知ってます」

そっぽを向いて唇を尖らせて。
そんな事を言われてもエンジンかかるだけ。

「誰かに何か聞いたの?
さゆみさん、ねねちゃんに相手にされないから…
手当たり次第ヤケになってる、とか
言ってなかった?」

「知りませーんっ、
さゆみさん!ふざけないで…!」

近づけた私の体を両手を突っ張って押し返す。
「舞台上でだけだけど!
私はちえさんの相手役ですよ?
私となんて、ダメでしょ?!さゆみさんっ」

言葉と体はウラハラだ。
突っぱねる腕にさほどの力はない。
プライドの高い姫が、迫られて悪い気がするわけがない。

「ちえさんをさし置いて、私と関係しちゃったら
…不倫してるみたい?
心が痛む?」

ねねちゃんの手首を掴み、
指先にキスをする。
そのまま、顔を近付ける…
「さゆみさんっ…!だめ…っ」

青ざめているならともかく、
頬も、白い指先までも、愛らしいピンク色に染めて、

だめ、だなんて。

突っぱねてるんだか
私のシャツに縋り付いてるんだかわからない、
小さな柔らかい残りの手もまとめて片手で掴み取り、
もう片手の手で
ねねちゃんの首を後ろ髪ごとちょっと乱暴に引き寄せて、、

ぷにぷにの唇に噛み付いた。

観念しろ、ねね姫。




ーある日のさゆみちゃん、でしたー

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