帝王の息子
□目覚め
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『んっ……』
深い深い眠りから目が覚めた。
確か父上が仕事で出かけて、部屋で魔法を勉強していたんだっけ。
随分長く眠っていたのだろうか、身体に力が入らない。
俺はガクガクする身体を無理に動かして、父上の居るはずの部屋に向かった。
ガチャッ
『父上…?』
「カナト様!お目覚めになられたのですね」
そこに父上は居なかった、代わりに父上の部下であるルシウス・マルフォイがいた。
だが、その顔は俺が眠る前に見た顔より老けているように見える。
『父上はどちらへ?』
「我が君は……カナト様が眠られた日に、行方知れずに……」
『…………は?』
俺は呆然とした。
父上が行方不明。俺の尊敬していた、大切な父上が居ない。
胸が苦しくなった。張り裂けそうな程。
目からはポロポロと暖かい何かが溢れだした。
父上の立場や仕事は理解していた。
父上は闇の帝王。
仕事はいつも戦場。
いつ死んでもおかしくはない。
理解していた、だがそれを受け入れるには俺はまだ子供だった。
膝からガクンと崩れ落ちるのがわかった。
最後に聞こえたのはルシウスの焦った声。
俺は気を失ってしまった。