So Am I

□乙女ノ祈リ
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この日、駅で待ち合わせていた彼は私を見つけた瞬間その笑顔を固まらせた。数秒間のフリーズの後、肩をガッと掴まれズルズルと駅の端の方へ連れて行かれるまま引き摺られる。



「…お前さんそれ着て電車乗ってきたの?」

「え?やっぱり変?うーんイギリスでは普通だったんだけどなぁ…」

「いや変じゃないんだが…って嬢ちゃんそんなもん着て街ん中歩いてたのか⁉」

「友達とたまにコンサートとかパーティーとか行った時にね」

「あぁなる程…って違う‼」



あぁもうこの子はっ‼と泣き真似をする彼…滝川法生ことぼーさんに私は首を傾げるしかない。変じゃないなら別にいいじゃない。



「じゃあなんで?言っとくけどぼーさんも中々キメてるわよ?」

「いやそーじゃなくてな?なんちゅーか…」



と口ごもるぼーさんに私は何だろうと自分の格好を見返してみた。


今日はぼーさんに誘われて彼のライブに行く事になったのだが、彼が「いつもよりめかしてこい」と言ったので少し露出を高くしてみたのだ。


ネックがあるノースリーブのスレンダーな膝上ワンピースにパールの長いネックレスを二重に巻いて首に掛け、ピンヒールを履き髪を上に上げた。全体的に黒でまとめ白いコートを羽織っているのだが、正直体のラインと脚が出ているだけで然程露出はしていないと思う。



「いやーこれナル坊に見られたら俺殺されるかも…」

「なんで所長が出てくるの?」



そこでぼーさんは歩きながら説明すると言って駅から出た。流石日曜の東京は渋谷でなくても人が多く進み辛い。


なんでも彼の話では、自分のファンであるタカという少女の学校で怪奇現象が相次いでいるらしく、今日ライブの後で話を聞くのでそれをSPRへ持って行っていいものか見極めてほしいとの事だった。



「それなら麻衣でもよかったんじゃない?」

「麻衣より美桜の方が確実だろ?」

「うーんどーかしら…」



麻衣だってもう半年以上経って随分それらしくなった。別に彼女でもいいと思うのだが…まぁ自分の方が長いし別にいいか。


そんなこんなでライブ会場に着いて、その途端ぼーさんを見つけた女の子達の歓声に思わず後ずさった。確かにぼーさんは見た目よし中身よし、モテそうだ。というか私この人と一緒にいて大丈夫なんだろうか。


なんだが色々まずい気がする。ぼーさんもしまったって顔をして、私の腕を引いて建物の中に入る。



「ぼーさんまずかったんじゃない?」

「いやー大丈夫だろ。それよりまずいのはお前さんだ。安全に帰り道までエスコートしてやるから任せとけ」

「そんな大袈裟な。ぼーさんのファンに色々誤解されて殺されるってなら納得だけど」

「…お前さん色々ズレてるって言われない?」



もう説明するのも疲れたらしい。そんな影背負ったら早く老けちゃうのに。



「さぁ?外国帰りだから?」

「やー違うな。そりゃ天然だ。しかも無自覚だから余計タチが余計悪い。お前他の男に誘われても絶対着いて行くなよ?」

「やだ、私幼稚園児じゃないんだから。ぼーさんお父さんみたいな事言うわね」



と笑えばもう諦めがついたらしい彼に着いて行って会場への扉まで連れていかれた。



「人が少なくなったらこっから入って来い。俺会場の片付けとか打ち合わせとかあるから少し待ってもらうけどオッケー?」

「大丈夫。あ、じゃあ暑そうだからこのコート置いてて貰っていい?」

「わかった」



とコートを脱いで渡し、会場にそろっと入ればそこは既にお客さんがいっぱい。…お姉さん達の方が露出高いじゃん。と思いながらぼーさんがとっといてくれた前の方の席に行った。



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