So Am I

□公園の怪談
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麻衣side



「はー…流石にもう風が冷たいなぁ」

「もう秋だもんねぇ」

「あ、美桜!仕事は?」

「まだあるけど気分転換。麻衣は?」

「もう終わり」



そう言えば、「じゃあお湯出しとくね」と美桜は奥に消えた。


あたし谷山麻衣と、彼女藤原美桜がここ渋谷サイキックリサーチにバイトに入ってそろそろ半年になる。ここSRRは名前の通り心霊現象じゃないかと思われる事を調査する所。


…まぁあたしはただのバイトだからたいして役には立ってないけどね。



「あ、バケツ洗えた?拭くから貸して」

「ありがとー!」



この子はさっき言った美桜。あたしの一番のクラスメイトでバイト仲間。この前学校の生徒会長になってずっと忙しそうだけど、そんなの感じさせない位ここでの仕事も完璧に熟してる。


そこで何時間ぶりに所長室の扉が開いて、ナルが顔を出した。あたしを見つけて「麻衣、紅茶」と言ってまた部屋に籠るのはもう日常と化してしまっている。



「お茶でーす」



そう言っても声なんてかけてくれないのはわかってるから勝手に開けて紅茶を机に置く。その時そっとナルを盗み見た。


彼、渋谷一也。あだ名はナルシストのナル。なんと十七歳にしてここの所長なのだ。
顔良し頭良しプライド高し口悪し。性格悪し…と思ってたんだけど、最近はちょっとそうでもないかなー…なんてね。


そこでナルがあたしの視線に気づいて目が合った。やばっ気づかれた⁉と一人焦れば、ナルはたった一言、



「まだ何か用か」



…焦ったあたしがバカだった。というかたまには「ありがとう」とか言えっての!と所長室を出る。



「そりゃお茶入れるのあたしの仕事だけどさっ。ヒトがこんなに、こ〜んなに心を込めて入れとんのがわからんのかい!」

「はいはいお疲れ様。クッキー食べない?」

「食べるっ」



とソファに腰掛けて美桜からもらったクッキーを頬張りながらナルの事を考える。思えばナルは謎が多い。娯楽なんて全く興味ないみたいだし、あんなんで人生楽しいのか疑問だ。


そこでまた扉が開いて次はリンさんが出てきた。答えはわかってるけど、一応声を掛けとく。



「あっリンさん。あのお茶入れましょうか?」

「結構です」



彼はリンさん。…って言っても実はそれしか知らなかったり。というかまともに会話した事ないかも…



「いや!でも今日は二回もしたじゃん!」

「…うん、麻衣。麻衣が気にする事じゃないと思うから、ね?」



項垂れるあたしを美桜が苦笑しながら撫でる。あたしはそのまま美桜の腰に抱きつけば、丁度オフィスのドアが開いてそこから着物姿の美少女が現れた。



「真砂子!」

「あら、いらっしゃい。今日はどうしたの?」

「こんにちは谷山さん、美桜。ナルを呼んで下さる?」

「所長?」



…いきなりそれかい、とあたしの表情が引き攣る。なんだかすぐに渡してしまうのが釈だった。



「生憎所長は仕事中ですので」

「あら、私仕事の依頼に参りましたのよ?」



と綺麗に微笑む真砂子にあたしが呆然とすれば、美桜が真砂子をソファに座らせて所長室へ向かった。



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