艱難汝を玉にす
□京都編
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「…この位で終わろうかな」
今朝もいつも通り修行をし、道場から出て本家に向かう。花開院は基本夜の仕事なので朝はいつも静かなのに今日は何故か騒がしい。
「どうしたのかしら…?」
と頭を捻りながら本家に入ると秋房と会った。その顔はどこか切迫詰まっている。
「あら、おはよう秋房」
「おはよう美桜…というかそれ処じゃないんだ!今美桜を呼びに行こうとしていたんだよ」
私を?こんな平日の朝早くに…
「訃報だ…
是人と秀爾が殺された」
「⁉」
是人お兄ちゃんと秀爾お兄ちゃんが……?
「ねぇ…冗談でしょ?あんなに強い2人が……
そんな訳ないわ‼」
私は急いで広間に向かい、お構い無しに襖を開ける。すれば重い面持ちで佇む義兄達と当主が目に入った。
「来たか美桜…」
そこには棺が2つ。一つはボロボロになり指がなく、もう一つは目が両方ともなかった。思わず棺の淵をギュッと掴む。
「こ…れと…おにぃ…ちゃんしゅ…じ…おにぃ…ちゃ…」
ありえない…花開院でもかなりの手練れの2人がこんな…
「美桜」
気づけば隣に竜二がいた。私は竜二の顔を見上げるものの目を伏せた。きっと私は酷い顔をしているのだろう。
人前で泣くのは嫌い。だけどその思いとは裏腹に目が霞んできた。私…腑抜けちゃったのかな…
「だいじょーぶ…大丈夫だよ、竜二」
大丈夫なんかじゃない…2人との思い出が蘇る。なんで2人なの?私の優しいお兄ちゃん達…そしてお兄ちゃんの友達なのに…
すると竜二が私の頭を優しく撫でた。ちょっとぎこちない手。でもしっかりとした手。そして真っ直ぐいつもの探る様な目じゃなくて、受け止めてくれる様な、そんな目で
「前にも言ったが無理するな」
と言った。少しずつ私の目が潤み保ってた顔が崩れる。
「りゅ…じ…うっ…な…で…ふた…りが…あぁっ‼」
竜二は無言で私の頭を抱えて自分に近づけた。その彼の不器用な優しさがあまりに温かいから涙がもっと止まらなかったんだ。