艱難汝を玉にす
□始動編
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プロローグ
〜12年前〜
「お兄ちゃんっ!お父さんっ!新しい術教えてっ!」
あの日、いつもの様にそう言って父に抱きついた。少し大きい仕事服を着て、髪をお母さんに結ってもらって。
まだその仕事の意味も重さもあまりわからず、ただただ追いつきたくて必死に修行していた。
「美桜はいつも元気だな。よし、今日は式神の修行をしようか!」
「そうだね。…美桜は将来、どんな陰陽師になりたいの?」
その兄の質問に、更に笑顔になって答えた。
「もちろん二人みたいな陰陽師!それでね、妖怪とも仲良くなって、たくさんお友達作るのっ!」
そう言えば父は優しい笑みで私の頭を撫でてくれた。その大きなやさしい手が私は大好きだった。
そしてこんな日々がずっと続くと信じて疑わなかった。でもそれは…
余りに幼く浅はかなものだったんだ。
「「!」」
「!…近くで妖気がする……」
夜の見回り中、洛中に突如漂った濃い妖気。まだまだひょっこだった私にもわかるくらいのそれは確かに危険だと伝えていた。
それを辿って着いた先は街の少し外れにある学校だった。この学校には小さな祠があって、土地神様が祀られていた。
「あれ!…大きい……」
グラウンドの真ん中にいる巨大な妖怪。今まで見たことのないその大きさに少し怯んだ。