番外編
□過去の価値は貴方が教えてくれた
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京都、西陣。
悠然と構える日本屋敷の一室では少女が眠っていた。子の刻もとっくに過ぎ辺りは静けさに包まれている。
『ねぇ…お父さん…お兄ちゃん…起きてよぉ…‼』
あの日、あの時。
私はどうすればよかった?
何が正しい選択だったの?
『美桜…』
そっと、頬に伸びる手。
兄の苦渋を浮かべた瞳に映る自分。
『お、兄ちゃ……』
『美桜…
あいつらに…隙を見せるな』
「おにっ……‼」
バッと起き上がれば、目の前に広がるのは薄暗い自分の部屋。それに一つ深い息を吐いた後汗でまとわりつく髪を強引に払った。
ーーもう、あれから13年…
いつになってもそれは色褪せる事なく、自分の中で過去にはならない。
どこかでそれが事実だとはわかってる。けれどそれに実感が湧かない…
脳裏を過る【あの時】の光景。飛ぶ血飛沫、父の表情に兄の言葉、全てが自分の中では今だった。
「……ごめんなさい…」
呟きに答える声はない。
溢れ出る涙を止めるでもなく両手で顔を覆った。