番外編

□過去の価値は貴方が教えてくれた
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竜二side



一月も後半に入り京都の寒さが身に染みる朝、花開院本家の長男、竜二は珍しく自分で起きた。
特に感慨もなく淡々と制服に腕を通す中ふと己の許嫁が頭を過る。


昨夜から美桜は実家である間家に帰省している。理由は一つ、今日は彼女にとって大きな意味を持つ日だからだ。
毎年この時期は必ず戻り、そのまま2、3日滞在していく。その間は仕事も依頼も全て断っており、それを止める者もまたいなかった。







「あぁ竜二!自分で起きたんや」

「…オレを幼稚園児と間違ってないか?母さん」



鞄を持って廊下に出れば丁度自分を起こしに来たのであろう母と鉢合わせた。相変わらずオレをガキ扱いしやがって。



「やってあんた、どんだけ毎日美桜ちゃんが困っとっる思ってんの」

「…それでも今日くらいは起きるよ」

「…もう、13年かぁ……なんやあっと言う間やなぁ…」



感慨深く呟く母さんを一瞥した後、軽く溜息を吐いて横をすり抜け居間へ向かった。
いつも通り自分の席に座りいつも通りご飯を食べる。だが隣にはあいつがいない。それだけでこんなに心中が落ち着かないものなのか。





ーーーどうやらオレも相当やられてるらしい。





学校も家も一緒だからと言ったところでオレらは互いに仕事を持っており、長期間側を離れる事も多い。
その時は特に何も感じないのに、この日だけはそうもいかない。側にいてやれないのが堪らなく悔しいとさえ感じる。



「…ご馳走様」



声に自嘲の念を含ませながら立ち上がり居間を去った。


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