英雄恋愛小説

□腐れ縁
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事件発生。

警察戦隊は新装備を支給され、現場に急行した。
運転は咲也、助手席に圭一郎、後部席につかさ。

「いやあ、さっきのは、さすがつかさセンパイっすね!」
「咲也!運転に集中しろ!」

圭一郎が叱り付けるが、咲也はしゃべるのを止めない。

「圭一郎センパイのこれを羊羹でだまらせるなんて、操縦法を心得てるって感じですか?」
「ま、圭一郎とは腐れ縁だからな」

装備を確認しながら、つかさが答える。

「腐れ縁って言うな!」

圭一郎は力の限りに叫んだ。

「怒るとこですか、そこ」
「俺たちは!」

そこで言葉を区切って、息苦しそうに顔を赤くする。

「こ、こ、こ…」
「圭一郎センパイ?大丈夫すか?」
「恋人同士だ!!!」
「えええええええ!?」

ハンドルを切り損ねそうになった。

「ええええ、マジすか!?」

圭一郎は頭を抱え込んでしまって答えない。

「つかさセンパイ?」
「そうらしい」
「え?マジで?うわ、すいません、俺気付かなくて。だって全然そんな雰囲気なかったし」
「あるはずがない。デートに誘われた事もないし、ましてや手を繋いだ事すらない」

つかさは表情も変えずに新装備のチェックを続けている。

「…それのどこが恋人関係なんですか?」

「面倒臭いから君には説明しておこう。小学五年のバレンタインに私がチョコを渡した。圭一郎が受け取った。以上だ」

「はしょりすぎです!」
「いや、本当にそれ以上何も無い。ただ、私が他の男と仲良くなる雰囲気を察知すると、さっきの主張が始まる」
「ええと」

ストーカー臭がする。
こんな奴を採用していいのか警察機構。
圭一郎は取り乱していて、つかさの話も聞いていないようだった。

「内密に頼む。管理官にばれては面倒だ。この仕事を気に入っているので異動したくない」

こんな危険な男とは働くのは絶対に止めた方がいい。
どう助言しようか迷っていると、つかさが後ろから手を伸ばして、圭一郎の両耳を引っ張った。

「いつまで壊れている。もうすぐ現場だ」
「…はッ!」

圭一郎は我に返って、装備の点検を始めた。
咲也はバックミラーを確認した。
つかさは苦笑して、慌てる圭一郎を見守っている。
本人同士がそれでいいなら、いいんだろうか。
そもそも二人はずっと同じ進路を歩んできた訳で、それはどちらか一方の希望などでは決してなくて。
腐れ縁にそんな深い意味が隠されているとは知らなかった。
現場が見えてきたので、咲也はそれ以上の追求を断念した。



end


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