天獣

□天獣
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私の力の発現は自分ですら覚えていないくらいに幼い頃だった。
普通一般の家庭。
待望の女の子という事で父は大層喜んでいたそうだ。

だが産まれて出てきたのは獣の耳と尾をつけた子。

当然父は発狂し、三人の兄達は嫌悪を示した。

母だけは私のような子が産まれるとは思っていたそうだ。

母の兄にあたる人がそうだった。

母の母もそうだった。
母は普通に人型で力の顕現も無かった。
だが神話は神話でないと知っていた。

だが父は人間だった。
それも清々しい程に。

神話という現実を忌み嫌う人間だった。

流石に捨てるという事はしなかった。
その代わり殆ど外に出してはもらえなかった。
兄達が学校へ、遊びで外に出るのをいつも羨ましく思っていた。

兄達からは暴力を受けた。
母だけが庇ってくれていた。

そんな中私が学校へ行く様になった。
尻尾や耳は何とか隠し普通の人間と同じ容姿にはなれていた。

兄達は外では優しい振りをしていた。
嫌悪は滲ませるけれど。
けど私にとっては家族なのだ。
兄達は眩しい存在だった。
父と兄達から目立つなと、陰の様にしていろと言
われた。
その通りにした。

けれど。

子供というのは敏感らしい。
獣の力や姿を見せずとも私はイジメにあうようになった。
それも私が人ではないからと無理矢理納得はした。

私の味方は母だけだから。

小学五年になった頃。

兄達は高校生になっていた。

その時にイジメが発覚した。
どうもイジメを行っていた子の兄弟が兄達と同じ学校
だったらしい。
兄達は多分私の事がバレるのを嫌がったのだろう。
家にいる事を勧められた。
その頃の兄達は随分と優しくなったと思う。
殴らなくなったし、蹴らなくなった。
けれど父は世間の目を気にする人だった。
それでも私は学校へ行かされた。

そして身体に痣が出来る位の暴力を日々耐えた。

偶然それを一番下の兄に見られた。
酷い所は骨にヒビが入った。
けれどそれは学校だけじゃ無かったから。
父からも暴力があった。
学校にバイトとあまり家に居なかった兄達は知らなかった。
身体が弱く入院していた母も知らなかった。

たまたま雨に打たれて風呂に入ろうとした兄に、傷を手当てしようと風呂にいた私を見られてしまったのだ。
この
頃には傷も直ぐに治っていたから、バレる事はないと思っていたのもある。
母が入院する病院に連れて行かれ、至る所の傷とヒビが兄達に知られた。

そして兄達は私を庇うようになった。
所謂反抗期というものだったのだろう。
よく兄達と父はケンカをしていた。
私は外に出る事が怖くなっていた。
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