□転生令嬢
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とある王国にいる、とある伯爵がおりました。
伯爵には前妻との間に娘を三人、後妻との間に娘を二人設けました。
五人の娘は伯爵家ながら美しいと評判でした。
そんな中、三女の婚約が決まりました。
だけど、その婚約は彼女にとって良くないものでした。
なにせ、相手というのは浮気者だったのです。
常識というものを知らない婚約者は堂々と浮気し、堂々とそれが娘のせいだとして一方的に破棄をお茶会で宣言するのでした。
5人姉妹の中で一番大人しく、またあまり能がないと思われていた娘は、腹を立てました。
常識の無い婚約者、それを擁護する周りの馬鹿、何より護るべき家族が敵に回った事に。
普段大人しい人間が怒ると恐ろしいとはよく言うものの。
娘の怒りは誰にも伝わりませんでした。
そう、この父親が属する派閥では。
そんな家族を見限り、彼女は広い世界を見る事にしました。
世界は思っていた以上に広かったのです。
狭い世界にいたのだと痛感した娘は…

「…」
「なあなあいいだろ?魔術師なんて誰かがいなきゃ弱いんだからさぁ。」
「そうそう。こういう時はランクの高いパーティーに入ってる方がお得だぜ?」

わたくしレティシア。
産まれは伯爵家。
浮気しておいて婚約破棄した馬鹿を見限り、それをわたくしのせいだとのたまった父親を見限り。
家を出、国王陛下に直談判して力を見せつけ、養子先を探して頂くようお願いしました。
幸い養子先はすぐに見つかり、またわたくしの希望をしっかり聞いてサポートまでしてくださった。
今現在、とある事の準備中なので、元より希望だった冒険者となり、冒険者してます。

「…依頼の完了報告よ。」
「はーい。…あんたらさぁ、ご高説垂れてるけど。」
「「「あぁ!?」」」
「レティシアさん、ソロでAランクの魔術師よ?あんたらじゃ足元にも及ばないんだから…失せろ!!」
「「「ぎゃっ!?」」」
「あいつら馬鹿じゃね?」
「なぁ?レティがソロ魔術師って知らねぇのかよ…」
「つか最初から誰かと組むなんてしない子だっつの。」

冒険者登録可能は10歳。
現在15歳…この世界では成人だ。
魔術師でもあるからドレスのまま戦ってるから自分としては普段通り。

「…お嬢。まぁたAランクの魔物ぶっ飛ばしてきたのか?いい加減社交のイラつきを魔物にぶつけるのやめろよ。魔物が可哀想だぜ?」
「お黙り。はぁー、いつまで家族で婚約者だと思ってるのかしらね。で、なに。」
「旦那様がお呼びだぜ。それはもうにこやかに、にこやかだったぜ。」
「うっ…」
「討伐から討伐に行くとこうなるって事をそろそろ覚えろよ。」
「…」

養父となったのはとある公爵様。
緊張と力が入るあまりだいぶ魔力を漏らしていたらしく。
10歳にしてはと謎の賛辞を頂いた上養子にして下さったのだ。
そしてわたくしは高らかに新しい家族の元で宣言した。

『冒険者になって世界を見てきたい!!』

と。

中々おっとり系に見える養子先は、普通の貴族ならやめさせられる所を笑顔で後押し。
プラスで貴族の教養もあったけど、冒険者出来るならなんでもやるわ!
で、今に至る。
最初は大変だったわぁ…高位貴族の教養を任される夫人や貴族達を黙らせる為寝る間も惜しんでレッスン。
更に戦闘訓練。
だけどそのお陰で今がある。
養子入りも、婚約破棄も無事成った。
なのに何故か生家と元婚約者の家はその事実を知らないらしく社交場に顔を出すと必ず皆の前でペラペラと恥を晒していく。
普通にムカつくのはムカつくので憂さ晴らしをしてた。
…お父様の召喚を無視してたのは悪いと思ってるけど…
とにかく帰ろう。
屋敷も、門から入る。
普通なら馬車だけどわたくし冒険者ですからね。
馬車など使いません。

「おや?おや!レティシアお嬢様!」
「お帰りなさいませ!」
「ただいま。話したいけどごめんなさいね?…お父様の召喚を1回無視してるから…」
「「またですか?」」
「うっ…ま、まぁとにかくまた後でね!」

養子入りしてから、使用人との仲を深めてみた。
前世の、地球という世界の記憶があるわたくしにとって、生家の屋敷は使用人から好きでは無かった。
ここの人達はとても良い人達だ。
冒険者の傍ら、覚えた薬学と錬金術で…ぶっちゃけ生活水準を前世に戻したかった。
それを使用人の住まう棟や使用人用の家屋区画でもやったら…まぁ皆好意的よね。
これにはお母様もホクホクだったから…やり過ぎた感はなぁなぁで流せたけど…

「…お帰り。このじゃじゃ馬娘。」
「ぅひっ…た、ただいま戻りましたお兄様…」
「父上の首がそろそろ天井につくんじゃないかってくらい長くして待ってるよ?」
「ぉう…」
「全く…今度は何を憂さ晴らしで倒したんだい?」
「グラヒウス。」
「なんだって?」
「グラヒウス。イノガタ系統のAランク魔物。」
「第二級指定の魔物を憂さ晴らしで倒すなって、また最初から教えようか?討伐にも討伐後にも色々事後処理あるんだけど?」
「…お兄様!」
「なんだい?」
「依頼受けたらグラヒウスがいただけ。進路の邪…じゃなくて運悪く出会ってしまったから倒しただけよ!」
「お前はそれを見越して依頼を受けるだろう?」
「はい、すいません。…だってすっごく腹立ったんだもん…」
「まぁ分かるけどね。本当にお前は辺鄙な家に生まれたねぇ…」

そですね。
とりあえずお父様の所行く。

「失礼します。」
「戻ったかい?このじゃじゃ馬っ子め。」
「うっ。」
「まぁ良いよ。グラヒウスの討伐は良くやったね。陛下からプレゼントが届いているよ。」
「…山…」
「またぶんどって来たねぇ…」
「当然だ。我が家の可愛い娘の成果なのだからね。…血の授結の準備が整ったよ。」
「っ!!では!」
「ああ、これで真実お前は我が家の子になる。早速儀を始めるよ。」
「はい!」

血の授結。
養子入りした時に身体の血を入れ替える魔術儀式だ。
わたくしの魔力が予想外に高かった為、お母様の調整が必要だったらしく、見送られていた。
魔力高める鍛練を編み出してお母様にお教えしておいた。
規定値まで達したんだね。
…まぁそれって結構凄いこと…

「あ、母上ってばそのお陰で師団元帥になっちゃったんだよね。」
「なんと!!?…まぁでも納得。」
「お前だけじゃなくて俺達にも魔術教えて下さったのは母上自身だからねぇ…」

お母様は元師団員だった。
結婚を機に辞められたと聞く。
お父様は陛下の補佐。
お兄様も王太子殿下の補佐だ。
家柄実力共に高くなければ選ばれない。
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