内緒の時間

□転生令嬢
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使用人も馬鹿ばっかり。
遂にはお兄様が戻ってきても付かなくなった。
と、言う事で。

「別邸へ移る?1人でか?」
「ええ。実はわたくし前世の記憶を何故か有しておりますの。…言ったことはありませんし、知識を用いた事はありませんが。」
「だろうな。」
「懸命な判断だよ。幼い頃に前世の記憶があるなど言えば確実に教会送りだ。」

前世の記憶を持つのは知識があったり、色々有用だとして教会と城が確保に躍起になる。
面白半分で言っていた街の子供が教会に攫われそうになり、あわや国との武力衝突になり掛けた。
そんな感じなので教会にさほど肩入れはしていない国です。

「まぁ教会の事は置いておいて、一人でも問題なく生活は出来ますわ。で、それを機に、わたくしちょっと試してみたい事がございますの。」
「ん?」
「今のままではわたくし達は結局アレシウス伯爵家の者。まずは庭からわたくしは「商品」を作ろうかと。ダミアンお兄様、小さいながら商会を作って欲しいのですわ。」
「…、前世の記憶を使うと?」
「ええ。そしてそれはアッシュお兄様の指示にて行われたと。それから…」

取り出したるは地図。

「地図を取りだしてどうした?」
「ここ。」
「ここ、になにかあるのか?」
「実はこの辺りに盗賊のアジトがあるようですの。…お兄様、久方ぶりに「昇進」なさいませんこと?」
「…どこでそんな情報…」
「わたくし家を出る事はここ数年温め続けた計画ですの。その為、従魔契約を学びました。先日この辺りで、この辺り近辺だけ、盗賊を見かけました。」
「っ!!」
「そこに盗賊ありと行けば何故報告をしなかったのか、と避難されますが。わたくしの素材採取及び従魔契約の為の護衛であるなら出会っても問題ないでしょう。わたくしの事は大丈夫ですわよ。魔術がありますし。」
「そういう問題ではないが、そこは確かにな。一部隊程を制圧となれば昇進は容易いか…」

お兄様、力はあるのですもの。
ただ、功績を挙げれるような事が無いから。
ちなみにダミアンお兄様は宰相府の宰相補佐官として遺憾無くお力を発揮されておられまして、次期宰相とすら噂されておられます。
腹黒いともいいますわね。
常に笑顔ですわ。

「誰かを呼びに行く役はわたくしが致します。ある程度の危険は承知の上ですし、これから一人で暮らそうというわたくしが自衛すら出来なければなりませんから、その練習とも言えますわね。あと最近良く従魔を探しに城壁外へ行きますから、中級魔術が出来るようになりましたの。もう少し使い込みたいですわね。」
「そこはまぁ置いといて。」

置いとかないで欲しいですわ。

「もう一人、確実に兄上が一人で残ったという証人がいる。」
「それならば大丈夫だ。俺の隊に一人新人が入ってきてな。」
「新人さん?」
「ああ。珍しく、女の子でな…アジケン子爵の次女だ。まぁ、理由も分からなくはないが…」

どんな方?

「実直…素直ではあるな。令嬢故の世間知らず感はあれど、子爵位だから平民への忌避は少ない。そもそもアジケン子爵が平民への忌避感が無いからな。まだ頼まれ事の機微が分からず何でも受けようとするし、功を逸るあまり剣術に乱れているな。ここらで「新人」にある挫折を味わっておかねばならん。自分が足でまといだったというな。」
「新人だからこそ、かな?」
「うむ。大抵の騎士はそれを味わう。俺も何度味わったか…」

こう見えてお兄様も苦労なされて今の地位におられます。
とにかくその子を連れて行く、という事ですわね。

「うむ。」
「で?ここに行く目的は?」
「わたくし前世の記憶の応用で、実は魔導具を作る事が出来ましたの。」
「「何!?」」
「で、今はもっぱらその素材を集めたいのですわ。これが上手く行けば、年々溜まる魔物素材は元より、国の物流も変わりましてよ。」
「魔物素材も、か?」
「ええ。必ず生活に根付くはずよ。わたくしが作るのは、糸と布。まず置き場に困る不用品とは、から考えましたから。」
「へぇ。詳しく聞かせて。」

勿論ですわ。
やはり宰相府にお勤めのダミアンお兄様。
国庫を圧迫している魔物素材の保管には食いついてくれましたわね!
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