混合世界

□仮
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そこに容れられて数日は多分死にかけていたと思う。
容れられてからの数日は記憶が無いから。
だけど目覚めた時に、私は竜の側にいた。
いたというか、うん、護られてた。
暫く傷ついた竜から流れる血を飲まされていた。
いや、動けない上に「飲め」とか言いながら顔にドバって掛けられたら嫌でも口に入るんだけど。

それが三日続いた頃、新たに容れられた人がいた。
それは噂だけだった妖精種だった。
羽が綺麗だと思った。
羽だけじゃなかったけど。
そして竜の身体に護られながら、けれども確かに死にかけている私を見て、その妖精の人は言った。
何故、知性ある者は時に悪に堕ちるのかと。
それを竜は黙って聞いていた。
そして聞いてきた。
お前はどう思うと。
だからそれにも応えた。

「光あれば闇があるように。正義や平和が光なら、悪もまた闇と同じなのだろうと思う。」

と。
違えば諍いが起きる。
それは必然だと思う。
だから争いは無くなりはしないのだと。
だから身を寄せ合う事も出来ると。
それからはその妖精の人(人間で言えば男らしい)も竜の側にいて、そして私の面倒を見てくれた。

どうも
本当に私の死にかけだったらしい。
竜の血と、妖精の血で私は長らえていた。

ある日、いつも通り二人の血を飲まされていた訳だけども。
突然身体中が熱くなった。
息も出来ないし、苦しかった。
二人はこれを待っていたと言った。
竜の血も、妖精の血も、どちらも他人の中に眠る力なりなんなりを呼び起こす作用があるとか。

そしてそれは二人の好意だったのだが、そこは研究施設だった。
どの行動も全ては研究の為だった。

当の私と言えば。
熱くて苦しくて、そして身体中で暴れる自分の力と格闘するのに忙しかった。
イメージ的には竜と妖精が身体の中を飛び回っている感じだ。
そして見えたのは自分の中にあるとんでもない物。

魔力や能力を視覚で見て判断する能力者がいると聞いた事がある。
その人が見ても同じ事を言っただろう。

「私の中に大きな時計盤がある。」

口にしたつもりはなかったけど、口をついて出たのはそんな言葉だったらしい。
文字盤の文字の所には文字無く、代わりにエネルギー体の様なものがあった。
そして暴れていた竜と妖精が針の位置に来るとまるで完全に完成したと言わんばかりにカチッと
音を立てて時を刻んだ。
そして唐突に理解した。
文字盤は魔力だと。
エネルギー体は私が持つ能力なのだと。
バラバラだったそれが、たまたま時を操る力に感化され時計盤を形取ったのだと。
そして竜と妖精の魔力も何故か私の中に定着してしまったのだと。
だから針になったんだろう。
形は竜とティンカーベルなんだけど。

そして。
目覚めた私の姿は更に変化していて。
黄色人種特有だった黒髪から金へ、そして更に今、白金に毛先だけが紅という色に。
瞳は紅、そして背には妖精の羽根が生えていた。
その変化には二人も大層驚いたそうだ。
だけど変化の反動からか私は一番強い思いのままに動いていた。

『護りたい。ここの虐げられている人達を。』

そしてこの日、一つの研究施設が誰にも知られる事無く消えて、一つの村が出来ました。
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