□異世界転生
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凄い御屋敷に来た。
なのに物が無いのは違和感。
本当に出るつもりなんだ。
そして用意された服に着替える。

「…」

簡単なロンTにビスチェ、ロングスカート、ブーツ、半袖のアウター。
町娘風、かな?
銀髪に変わってるし、瞳も蒼だ。
スカーフでカチューシャにした。
外に出るとあの人がいた。

「そういや自己紹介がまだだったよな。俺は…昭島貴大、こっちじゃルイスだ。」
「霧澤水華です。こっちではレティシアですね。」

多分もう前の名前は名乗らないから。

「あれ?それ…刀?」
「ああ、着替える前に武器庫を見せてもらったんだ。そしたらあったから。」
「…普通の剣じゃなく?」
「あー…俺大学卒業まで居合の剣術道場に行ってたから…多分、刀の方が戦える。」
「そうなんだ…」
「レティシアは大丈夫なのか?」
「戦うという事?」
「ああ。俺は男だし人の生き死には…まぁちょっとした事があって慣れてる方ではあるが…」
「…、私も大丈夫。」
「…」
「介護士する前は米軍軍人だったから。」
「は。」
「上司の無茶振りが嫌で辞めたのよねぇ。」
「なんで…」
「んー…お父さんが自衛隊から米軍に転属したからかな?」
「はー…そういう人もいるんだなぁ…」

まぁ軍人生活は嫌だったから日本に戻って転職したんだけどね。

「ああ、二人共待たせたね。」

呼ばれてサロンと呼ばれる所に来た。
辛うじてここには椅子があったが、恐らくテーブルもあっただろう。
空間が空いている。
そこに美人な男女数名。

「先程は申し訳ないことをした。」
「いえ。」
「その、私達は女神様より別の国に行く事は聞いていましたから。」
「っ!そうか…出立は今夜。その前に簡単な魔術と訓練を受けておいてくれ。それと…レティシアさんたったか?」
「はい。」
「君は生産職を持っていると聞いた。」
「はい。」
「もう一度、聞かせてもらえるか?君も頼む。」
「は、はい…俺は剣士と商人を女神様に頂きました。」
「ほう…」
「私は弓術士、魔術師、裁縫師、料理人、彫金師、薬師、医師、庭師、錬金術師、聖女…です。」
「っ!?」
「聖女、だって?」
「は、はい…」
「…君達には話しておこう。あそこで王が語ったものは全くの嘘だ。」

魔王が敵、というものですね。

「そうだ。それに従えない者…主に私達のような者だな。それが国を出る決意をした。それは我が国だけではないのだ。そして我等が目指すのは一つ。…ここだ。」

広げられた地図。
わりと世界としては広そうだね。
そしてクロフォード公爵はとある場所を指した。
大きな大陸?

「北に位置するこの場所。四季があり冬は厳しいがなんの集落もいないまさに無人の大陸。我等が行くのはこの大陸に作られる「アルストーロ帝国」だ。」

えっと…

「無人大陸…に、作られる?」
「そうだ。初代皇帝となるは昨今の各種族の未来を憂いた魔王。宰相は三人体制で私がその一角を担う事になった。帝国を三分割し、それぞれの宰相が次期皇帝候補を皇帝と育てながら、国を運営する。というか、それぞれの大臣などは基本どの国も一人だが、帝国は必ず三人体制だ。なにせ全世界の全種族が一様に集まるからだ。」
「…もしかして…俺達がされた召喚の儀式を行う国が多いのですか?」
「いかにも。魔王も単に魔族の王というだけで世界滅亡など企んではおらぬ。まぁ世界征服は目論んでおる輩もおるだろうが、そんなものは人間もいる。」

まぁ、そうだね。

「魔王オストロはそれを憂い、種族に忌避、差別のない全ての種族を集めた。我が国の王も跡継ぎもアレだからな…既に崩壊の予兆は多く見られた。故に我が国も出奔をする者が多い。」

それだけそういう国が多いのか…

「この海岸まで行けばオストロ様の魔術で国に飛ぶ。君達はオストロ様にご報告はせねばならんが、私の管轄区で暮らせるよう手配しよう。」
「「ありがとうございます。」」
「いや…此度の儀式を止められなかった責任というものだ。ルイスは商人になるかね?」
「はい!自分の目で見て、売るものを見定め取り引きしたいと考えています。」
「うむ。レティシアは…」
「私は…自由に自分の作りたいものを作りたいです。」
「そうか。ならば二人には相応しい家屋を用意させよう。出立は夜中だが、当然こちらは魔物がいる。アルバーノン、二人に最適な手解きを。それと基礎もな。その後仮眠を取り、出発としよう。」
「かしこまりました。」

新しい生活…
これはこれで中々楽しみだ。
その後公爵様方はいなくなり、基礎知識の勉強から。

「この世界は魔力が資本でございます。何を為すにしても魔力に慣れていなければなりません。まずは子供に教える物からお教えいたします。」
「ありがとうございます。」
「いえ。」

なるほど…生活魔法で掃除とか家事とかするんだね。
これは有難い。
なんせ家電が当たり前だった地球からだと手作業って凄い…………新兵時代を思い出すな…

「…」

ふと。
そう言えば米軍に無理やり入れられたのは15歳だったと思い出した。
自衛隊員だった父親は米軍に憧れていた。
沖縄出身で身近だったからと言っていたわね。
だから私にも感じて欲しいと無理やり入れられたんだった。
まぁその件で一瞬で母さんが離婚届出して出ていったけど…
父さんは勝手に自分と私の国籍をアメリカに変えてしまっていて母さんが引き取る事は無理となってしまった。
あの時初めて父親に殺意抱いたんだったか…
私は、無難に手芸していればそれで良かった。
暇さえあれば刺繍をしていたな。
まぁ、アメリカに行って良かったのはそういう用品がすぐ手に入った事だけだったわね。
そこは流石洋式。
日本に戻ってからアメリカでよく見ていた手芸用品店が少ない事に驚いた。
物の少なさにも驚いたなぁ…
それからは給料を貯めてアメリカに戻って買いに行ってなぁ…
まぁ食事は和食の方が好きだけどね。
いや、色んな国の料理が好き、かな。
そこは渡米して良かったかも。

「ではまずは火を付けてみましょう。」

よし、私は私らしく楽しもう。
帰れないらしいしね。
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