□転生令嬢
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まずは隣国だった所のザンジー栽培地に来てみた。
成功したと言っても、果樹園などが広がっている訳では無い。
とある貴族の庭で奇跡的に育ったのだ。
まぁ今は戦の余波で暴動も起きて貴族の屋敷という屋敷は壊され焼かれているのだけど。

「でもお姉様?こんな所で何を見るの?」
「貴族の庭ならば世話していたのは当然庭師でしょう?それを見るのよ。」

記憶というのは物にも宿る。
記憶を抜き出し過去の日々を見る。

「ふむ…庭師も特別何かしていたわけではないのね。」
「そのようですな。」
「これならば屋敷のお庭でも出来ますぞ?」

他にも何かあったはず。
でなければ栽培の専門家である農家が育成出来ていない理由がないもの。

「…、そうか。隣国の貴族は風を通さない結界術で屋敷を覆っていたからだわ。」
「え?そうなの?」
「そう。恐らくザンジーは野生でも風が通りにくい場所にあったはず。見つかったのは…やはり、山の中の崩れた洞窟の中だわ。風が少ない土地の山よ。」
「ほう…」

そして、その山に住む魔物…

「ふふっ糸口が掴めたわね。」

さて、取り掛かりましょう。
前世の地球での記憶と魔力のあるこの世界ならなんでも出来ちゃうわね。

「これで良しっと。…やっとあなた達も放してあげられるわね。」
「わぁ!ハニールだね!」

とはいえ、これを後々農業に組み込むなら…

育成も順調なある日。

「…マルグット侯爵が首切りを大量?…ああ、試験のザンジーの半分が枯れたのね。」
「でもお姉様が見付けたのは風のない所だよね?」
「枯れて当たり前ね。…ローウェン。」
「はい。」
「この首切りにあった人全員連れてきて。いい労働力だわ。合格すればザンジー栽培の即戦力よ!」
「ほほっ良い案ですな。暫しお待ちを。ああ、旦那様よりお手紙が。」
「そっちを早く出しなさいよ…」

なになに?

「お父様なんて?帰ってくる?」
「もうしばらく帰れないみたい。今東の大陸の方で足止めされてて、復旧は…試験の成果途中発表の頃…合格者決定の日までには戻れるそうよ。…あら!」
「ん?」
「どうしました?」
「今回の外交で新たに三国と国交を持てた功績でお父様外務大臣に就任なさるそうよ!」
「まぁ!」
「外務大臣って今空席なんだよね?」
「諸外国を理解して外交の指示を出さなきゃいけないからね。お父様なら納得ね!」
「そだね!」

本人は至って旅好きなただの初老貴族とか言ってるらしいけどね。
わたくしとカリスは貴族社会からすれば遅くに出来た子供。
まぁ行き遅れの25にもなっても家にいる兄と姉と比べればまだまだ花盛りだし、カリスも有望な人員の一人だ。

それから2日。
集められた首切りの人員実に50人と来た。

「…」

50人を一斉に首切りって…
思わず閉口してしまったわ。

「あ、あの…」
「まずは。わたくしの事から。まぁ良くない風聞は耳にした事はあるでしょうね。わたくしはレティシア・クロノワール伯爵令嬢。」

ザワつく。
まぁ平民にもこれが浸透してるとか有り得ないから。

「そしてザンジー育成をしている試験者でもある。こちらにおいでなさい。」
「…ここは、温室?」
「ええ、そう。まぁ例え育成状況を流されたとしても、侯爵では真似しようもないけれどね?」
「え?」

中には何人か侯爵の手の者が紛れているみたいね。

「お金かしら?」
「…、はい…」
「俺たちは…病気の家族が…」

ふむ。
ならば。

「ローウェン。速やかにその者達をお連れなさい。」
「かしこまりました。」
「え?」
「世間でなんと呼ばれてるか知らないけど。わたくし自身は医者よ。病に罹る人間がいると聞いて何もしない訳はないわ。あ、ちなみにここがあなた達の仕事場であると同時に住む場所になるわ。」
「どういう?」

中に入れば分かるわ。

「こ、これは…」
「温室…の中…なのか?空も…向こうには森?」
「土…どうなってんだ?」
「ここ、は。わたくしの作った魔道温室よ。温室自体が魔道具なの。」
「なんとっ」
「おい、おい見ろ!!」
「森だと思ったのが…これ全部ザンジー!?」
「こんなに!?」
「そう。わたくし1人でもここまで育成出来たのよ。まぁちょこっと魔術で最初の株は成長させたけど。」
「こんな…」
「凄い…」
「…ハニール?」
「だけじゃない?」
「あっお姉様ー!」
「カリス。どうしたの?」
「また変な虫入り込んでたから駆除しといた。スパーダと!」
「シャッ」
「…あなた達仲良しねぇ。」

さて。

「ここを任すにあたって。わたくしの指示に従ってもらうわ。それでも構わないというなら、残りなさい。従えないというなら、出ていきなさい。」

誰も出ていかない。
なら、全員と契約ね。
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