□一話
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「…」
「…」

先程聞かされた話。
それは自分達が死んだというもの。
にわかに信じがたいその事実はお互いの葬式や哀しむ人々の映像を見せられた事で少しずつ理解し始めていた。

『じゃが…これは本来起こり得ない事での。』

そして、本来ならば自分達が死ぬ事はなかったのだとも教えられた。
死ぬ筈の無い人間が死ぬ。

『ある筈の無い未来が起きれば必ずや修正される。だが、死ぬ事の無かった命はどうなる。…わしはその「死ぬ筈の無い命」を掬い上げ別の世界に適応するようにするのが仕事なのじゃ。』

だがそれは今までと違う生き方になる。
老人は二人に時間を与えた。
新しい生き場所を選ぶか、あの世へ行くか。
だが。

「考える事もねえな。」

何せ自分はここに立っている。
わざわざ死にに行くこともない。

「どうじゃ?」
「オレは新しい生活を望むぜ。」
「俺も。」
「ふむ。久しぶりに良い目を見たわい。」

ふっと笑う老人は二人を見た。

「行く前に名前を聞いておこうかの。」
「オレはユーリ。ユーリ・ローウェルだ。」
「俺は鳥海浩輔。」
「うむ、ではユーリ、浩輔。まずはお前さん達の次の世界を決める為に試練を課そう。なぁに、簡単じゃ
。数多くある扉の中で開けれる扉を見つける。それだけじゃ。」

そう言った老人が指を鳴らせば庭園の中にドアが現れた。
そして促されノブを回し…

「「開かねぇ!?」」
「お前さん達の中の新しい力に反応せねば扉は開かん。」

と、次々と試す。
そして最後の一つ。
二人は同じ扉の前に立った。

「…」

まずは浩輔。

「!!開いっ…ってこっから動かねぇ!?」
「!?」
「よし、じゃ次オレ…ってオレも開かねぇ!?」
「…」

最後の最後で開いたのはわずか数センチ。

「ううむ…まさか…」
「何?行くなってか?」
「お前さん達、扉はあと一つある。」
「「ん?」」
「この扉を使えるのが驚きじゃわい。」

と、再び老人が指を鳴らせば扉は消え、たった一つだけ庭園の真ん中に現れた。

「やってみるといい。」

今度はユーリから。

「……………開いた…」

意図も簡単に開いたドアを目を丸くさせて見る。
勝手に閉まったドアを今度は浩輔が、ユーリと同じく簡単に開けた。

「その扉はの、少々複雑な力の持ち主にしか反応しない。…まさかあの子と同じ力に逢うとはな…」
「「?」」
「いや…その扉はな、超能力を魔法転換出来る事の出来る人用
じゃ。」
「ちょーのーりょく?」
「ってあの念力やら瞬間移動とかの?」
「うむ。」

そしてまた椅子に座らせられる二人。
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