時の園

□QUARTET NIGHT仲良くしよう!なファンタジー
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猫、という姿は便利で不便だ。
偵察等には最も効率が良い。
表立って話せないのが不便。
だがそれを不満にするまい。
何故か。
私は本当ならこうして息をし、自由に動く事すらもう出来ないはずだったのだ。

十年前。
私は半分陰と化していた。
陰とは、恨み辛みを抱え死んでいったありとあらゆる魂が魔物へと変化する事。
人間だろうと、魔族であろうと、天使であろうと、その内に身を焦がす程の恨み辛みを抱えれば陰へと変化する。

私は人間の世界では大昔、ただ一人の神に仕える天使だった。
だが我が神は私を魔界に閉じ込め、挙句裏切り者の烙印を押した。
私が何をしたという。

神を崇め、そして敬虔に仕える。
それが天使であり、我が神は私の唯一の存在だった。
だが、それは我が神自身に裏切られた。
疑問と猜疑が私の中に生まれた。
そこからただ、天使であるプライドだけで半分天使を保って、陰としてさ迷っていた。
長い年月は私から神に仕えるという意味を奪った。

そんな中、十年前。
とある少女に出会った。
一点の曇りもなく、ただ純粋に、闇を放つ光の少女。
魔族の象徴である負と、そして神の象徴
である聖を併せ持つ不可思議な少女。
それが水華だった。
普段、陰を事もなげに滅する水華。
魔族の傲慢も、神の慈愛も併せ持つ、本当に不可思議な三歳の子供。
そんな子供に私は陰を残したまま救われたのだ。

『だったら、光も闇も持っとけばいいの。どっちかなんてそんな甘い考え、日和見の老人だけで充分だわ。』

天使の笑顔で悪魔の言葉。
そんな1文が頭をしばらく離れなかったものだ。
そんな娘が、かの絶対神の娘とは驚いた。
が、私は考えを改めた。
天使だから神に仕えるのではない。
主は我が心で決める。

何も考えていない様で、様々な事を考え動く水華。
そこには全てに対して厳しさと優しさを持っていた。

父君に聞いた事がある。
水華は一体何者なのかを。
それをあの神は笑って言った。

『天魔である我が娘よ。』

天魔。
神である天族と、そして魔族を併せ持つ種。
概ね古代神達がその類であり、前の主はまるっきりの天族であった。
この神も天魔だ。
時として神に、時として魔神として神話を残すこの神はたった一人で世界を滅ぼせる力を持つ。
それを水華は吸収し自らの力に換えたという。

ただの人間の、それも赤ん坊の魂で。
生きる本能、と言えば聞こえは良い。
だが、元より高過ぎる魔力は人間では制御しきれない。
が、父神の元に居ては制御のしようもない。

故に人間界へ陰の討伐と銘打っての修行だった。

だが、子供らしからぬ娘は確実に主と呼ぶに足る物を示してくれた。
例え子供だったとしても。
私はそこに光を見た。
主と慕った神には見なかった光を。
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