新世界

□仮
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この世界には実に不思議が溢れている。

時として常識や人知を越える、なんてこともある。
しかし。

あまりに突然で突拍子もないと、どうして良いか分からないだろう。
そう、彼女もあまりに突然で突拍子も無さすぎて、文字通り途方に暮れていた。

場所は森の中。
目の前には狼の様な生き物の群れ。
今しがた自分自身が放った「氷」の山と突き刺さる狼の様な生き物。

そして。

見る間に小さくなる己の手に、完全に幼女となってしまった霧澤水華は混乱しきっていた。

「手が…違う、私が小さくなっちゃった!?」

と、唸りが響き現実に引き戻される。

「ど、どうしよう…どうしよう…」

幼女になってもまだ縮む彼女の身体は最早幼児と言うより赤ん坊と言うべきサイズになりつつあった。

「あ、うっ」

着ていた服は脱げ、裸になるまいとキャミソールを引き上げる。
攻撃が来ない事に狼の様な生き物達はゆっくりと水華に近付いていた。

「ひっ…」

後ずさると落ちた服が足に絡まり倒れ込む。
その隙を逃す野生動物ではない。
一斉に水華に飛びかかってきた。

「やーーーっ!!」


叫びと共に水華は完全に赤ん坊に。
だが、その叫びと共に水華自身から放たれたのは様々な力。
その力に狼の様な生き物達は焼かれ、流され後に残ったのはもう立つことすら出来なくなった水華と狼の様な生き物達の死体の山だった。

「あ…ぅ…(声が…言葉が出ない…今の、私が…?)」
「ほう…これだけのウルフを。凄まじい力だな。」
「まぁ…少し空間が捩れているわ。」
「うむ。」
「ぅ?(誰…?)」

木々の間より現れた男と女。
だがもう乳飲み子と変わらない水華は顔を向ける事すら出来ない。

「安心して?わたくし達はあなたを迎えに来たのよ。」
「ふむ…退行がまだ終わっておらぬな。」

女に抱き上げられ、男が水華の頭を撫でる。

「水華か。良い名だ。」
「可愛らしい女の子。わたくし女の子が欲しくてたまらなかったのよぉ。」
「…水華よ。このままではお前はお前自身の力に死んでしまう。選択の余地がない事は済まないが、我らの子として、再び生を受けよ。」
「生きなさい。死んでは駄目よ。」

不思議と嫌な感じはなく、そのまま眠る様に水華は光に包まれた。
そうして女の腕の中で水華は安らぎ
を感じていた。

その一年後。

水華は母となった女と父となった男が神である事を知る。
そして、二人はこの時の園という世界の王である事も。
前世の記憶を有したまま、水華は新たな人生を歩む事になった。
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