異世界渡航

□蒼井君と美風君と、そして私。
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川で遊んで。
勉強して。
充実の中学生ライフだね。

そしてセシルの帰国、ST☆RISHの本当の結成、うたプリアワードのノミネート。

一気に色々あるねぇ。

そんなこんなで夏休みも終わり。

学校もなにも問題なく進んでいった。

「もうすぐだねぇ。」
「後は彼ら次第。」
「うん。」

美風君とたまたまそこらで会って、ぶらぶらしていた。
と。

「あ、バー。」
「こんな所に…蘭丸が気に入りそうだよね。」
「だねー。」

ここ…ああ、この近くでタクミが…

「ん?」
「?」

若い女。
その向こうの里津花が気になるけど。
それ以上にあの女の人が…

「コインロッカーを見てる?」
「…」

あの場所は。

「…そこに居た赤ちゃんならもういないよ。」
「っ!?」

振り向いた女の人に。
やはりタクミの母親だと確信する。

「…あの子、ちゃんと戸籍貰えた?」
「っ…貰えた、ね。今は里親さんの所で元気にしてるよ。」
「そっか…あたし、戸籍ないからさ…病院にもいけなくて…」
「…」

戸籍ない…じゃあ…

「昔…名前をくれ
た人がいたのよ。…逃げたせいで余計に…家も…」

待って、待って!

「あの子が幸せならそれでいい。」
「水華?」
「良くない!!」
「え?」
「…箕面さん、は…あなたを待ってる。千葉にある拘置所に行って。ちゃんと話して。」
「箕面って…待って…じゃああの人は…お父さんは…」
「騙されて、それでも罪を償うって今も服役してる。芳香さん、あの人をお父さんだなんて呼ぶんなら、ちゃんと行って。」
「っ!あたしの、名前っ…」
「今の世の中なら。ちゃんと認めて貰える。あなたが現れた事で、箕面さんの刑が変わるかもしれない。ちゃんと、して。」
「っ…」

走り去る芳香さん。
一年前のあれから、全国で一斉に能力者施設を摘発した。
芳香さんはその中にいなかった。
でもタクミをここに入れられたのは逃げていたから。

「あの人は?」
「…行方不明者。生まれた時からの…」

現在も戸籍のない能力者達の戸籍作りは終わらない。
中にはやはり逃げ出して、戸籍が無いまま誰かの子供として育って来た人がいる。
そういう人は育ててくれた人の養子になってる。
身元不明でも養子縁組は出来る。
今は戸
籍が無いまま、地下の施設で「飼われていた」人達の戸籍作り。
名前を考えなきゃいけないから、ある程度育ってしまっている人達の対応が主。
18未満は未成年として里親を探せる。
18以上が難しいのだそうだ。

「や。」
「世良さん。お久しぶりです。」
「久しぶり。さっきの子、知り合い?」
「まぁそんなものです。世良さんはなんで見てたんですか?」
「何でだろうねぇ…あの思い詰めた表情が気になったからかな。」

ふーん。
それにしても…
この界隈アイドル多いな…
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