異世界渡航

□仮
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次の日。
異変が起きた。
寝るまでなんの変化も無かった水華。
その水華の入る植物にたくさんの花の蕾が付いていた。
水華のいる1番大きな水球も大きな蕾に包まれていた。

「なんだよこれは…」
「ぬ…?」
「これは一体…」

だが、調べる間もなく。
轟音と共に、別れた死神達と、何か…真っ黒な人?

「いかん。魔人が蘇ったか!」
「全く…ここに来させまいとしていたのに。憎らしい子達ね。」
「あやつらのせいでは無かろう。戦えぬ者は水華の傍に寄れ。戦える者は我に続け。」
「まっ退屈しのぎにゃ丁度良いかもな。」
「いやー、なんだかヘビー級よぉ?」
「んなのいつもだろ?」
「…それもそーねー…」
「んじゃいっちょ暴れるとしますかね!」

混戦、とはこの事か。
その時ふと違和感を感じた。

「っ!カミュ!!」
「ミューちゃん!!」
「しまっ…」

魔人の爪が俺に届くその瞬間。
何かの力が魔人の腕を吹き飛ばした。
静まる場に、淡い光が沸き起こる。

「こ、これは…」
「まさか原初とも言える力?まさか…」

クロノスとディアナが驚きの表情で後ろを振り返る。

そこには水華の…

「っ…花が…」

誰かの呟き。
誰もが息を呑んだ。
振り返れば大きな蕾が開き始めていた。

「水華さん?」

七海がその蕾に触れた。
俺達が七海の曲を歌う時に感じる暖かい物。
それが溢れる。

その瞬間。
一気に花弁が開いた。
その真ん中には金と紅の髪の娘。
女神と呼ぶに相応しいその姿は神話にある様に美しい。

「ぅ…あ…」

だが言葉を発する事は無く、立つことすらままならず、地面に落ちる。

「水華!!」

近くにいた者達が駆け寄る。
水に入っていた為か濡れている。
だが上げた顔を見て。

あの、落ちる瞬間、伸ばした手が届かずに落ちていく水華の顔を思い出した。

「水華。」
「…ぉ…と…」
「うむ。」
「う…ぅ…あああああああ!!」

叫び声がこだまし、風を呼び起こす。
それがいとも簡単に魔人を刻む。

「なんて魔力…」
「水華さんっ」
「…」

七海が水華に抱きつく。
風が止まる。
その瞬間、頭を抱える水華。

「水華?どうした?」
「う…うぅ…」

と、カッと目を開いた水華の口から。


「禍者…禍者…」

ふわりと風が吹いたと思えば。
魔法陣が浮かぶ。

「時の河を渡りて闇へ還れ。」

その詞を放った。
その瞬間水華は意識を失い、魔人は魔法陣からの風でボロボロと崩れ落ちた。
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