異世界渡航

□トリップ
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新暦1045年

この年、世界中で新しい教育制度が施行された。

今現在、凶暴化する動植物…いわゆる魔物に被害を受ける人や都市が急増している。
子供のうちから、なるべく戦える人間を育てようということらしい。
もっとも、この制度の立案は世界中枢国リンデオールの国王であり、全知全能の神ゼウスがしたという。
全くもってヤツの作った制度に則らなければならないのは癪に障る。


とにかくこの新制度は、まず能力重視だということ。
能力とは、人が生まれ持っている力の事。
超能力、魔力、その他。
神含む天族と魔王含む魔族。
そして人間、獣人、鳥人、魚人(人魚も含む)が元来より持つ力の事。
また、自然寄りの能力もあれば、魔術しか使えない魔力もあるらしい。
えっと…作用運用魔力欠如症だったっけ?
なんかそんな病気があって、全人口およそ百億以上の約五分の一は魔術しか使えない人らしい。
ちなみに私はどっちも使えるし、人に無い力も持ってる。
が、それは一応特秘事項なので言わない。
ともあれ、今年から今までの年齢別のクラスじゃない。
年下、年上関係ないとの事。
それはちょっとめんどくさくもあり
、ちょっとドキドキするのも確か。

「水華ちゃん、長期休暇は帰ってくるんだろ?」
「うん。」
「けどよぉ、なんでわざわざ外の学校なんかに…」
「バカ!水華ちゃんの学校は…」
「っ!!…悪い…バアサンの遺言だったな…」

ここは危険海域のど真ん中、海の中の国にほど近い島。
大きさは結構広い。
島だから海に囲まれてるのは当然。
そして中心部には山が三つくら聳えてる。
変な洞窟は多いし、海にも山にも野にも川にもやたらと強い魔物がうじゃうじゃいるけど。
観光地指定されてないけど、むしろ危険海域の中の危険地域として地図に乗ってるけど。
それでもここにやってくる物好きは多い。

「うん。それより2人をお願いね。」
「任しときな!」
「水華…」
「?」
「…なんでもない。気を付けてな。」
「?うん。秀兄も修行頑張ってね。」
「おう。なに、ちょっと離れてる間にうんと腕を伸ばしとくよ。」

何故か?
それはここの魔物は他に比べたら物凄く美味しいから。
そして危険でもここに来る人の目的はそういった美食目当て。
だから宿屋や食事処、酒場やってる所が多い。
この人達もそう。
私達兄弟を育ててくれていた婆ちゃんが死んでからはよく気にしてくれてる。
宿屋がうちの目の前にあるし、この島じゃ一番評判がいい。
おやっさんと女将さんが作る料理も凄く美味しいし、何より料理専門の人じゃないと捌けない近海の魚も調理出来んだよ。
ちなみに婆ちゃんはこの島に一番被害出してる主に負けた。
この島じゃ一番強いのに。

「うん。楽しみにしてる。私も強くなってくる。…じゃ、行ってきます!!」

私が強くなりたいのは主を倒したいからじゃないけど。
ヤツを倒す事もやる事リストの一つ。
私は多分まだ婆ちゃんにまだ及ばないだろうから。
この島の漁は二つ。
他でも見る船での漁法。
それから島の有志による「戦闘」で獲物を狙う方法。
船もここに来るのは最上級魔術に耐える金属で出来た武装船だけどね。
まぁ、この島の子供で捕れる魚なんて、他の土地で暮らしてる人じゃ取れない場合が多いけどね。
もちろん魚だけじゃなくて野生の動植物も似たような感じだけどね。
それぞれ山と川、そして海と三つのポイントで猟師のギルドがあるんだ。
中央市場を取り仕切ってるんだよ。
ここの街の運営は全部そのギルドを纏め
てる役場の人がやってる。
荒くれ者を纏めてる凄い人達。
…笑顔が恐ろしい時があるけど。

とにかく。
今日、私霧澤水華は十年ぶりに外に出ます。
ん?ここの住人じゃないのかって?
いや、違う。
私の出身は他の所。
ただ、十年前誘拐されて、そして2度とそんな事件に巻き込まれないようにこの島に住んでる。
ここにすんなりと来れるのは誰一人としていない。
神も魔王も、ここの変な環境に手こずるから。
ま、今は来ても返り討ちだけどね!
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