□転生令嬢
1ページ/4ページ

転生した。
それだけなら前に読んだラノベの様に喜べた。
だが、前世の記憶も素直に喜べない。
なんせ、思い出したのが今。
たった今。
それも第二夫人の手の者に母と二人殺されそうになったから。
とりあえず傷を癒す?
いや、その前に安全を確保しよう。

ここは多分家のある街の近くにある村。
最近魔物のせいで打ち捨てられたと聞いた。

何が、お似合いの末路だ!
お母様はこの国の王族なのに!
何も知らず第二夫人に入れ込む父も、母を裏切った兄も大嫌いだ!

いや、言っても仕方ない。
遠のく意識。
何とか唯一使えるスキルの糸で結界を…

そこでわたくしの意識は途切れた。


良い匂い?
目を開けると…

「…ここ、どこ…」

やたら煌びやかながら暗い部屋。
上体を起こす。
するとパッと明かりがついた。
いや、は!?

と。
バタバタと音がして。

「レティ!!!」
「おか…ぐえっ」
「よかったわ!!!ずっと熱が出ていてっ」
「落ち着けユフィ…」
「だってアノン!!」

いや、とりあえず落ち着け?
目の前のこの人、白金のうねうねウェーブのロングヘアのお母様。
いや、待て。
お母様の瞳は紅くないし、耳もとんがってない。
しかし、見るにお母様だ。
そして一緒に入ってきたこの人。
アノンと呼ばれた黒髪に紫の瞳の男。
記憶しているなら、この人魔大陸の七人の魔王の容姿にそっくり。

「おかあさま。」
「なぁに?レティ。」
「かがみ、みたい。」
「あらっふふっ良いわよ。」

何がどうなった。
お母様に抱かれて(いかんせん4歳である。)鏡の前に。
お母様譲りの髪。
いつも通り。
目。
紫と紅になってやがる!
耳もお母様と同じで尖っている。

「???」
「あらあらぁ。流石のレティちゃんも困惑を隠せないみたいねぇ。」

そもそも記憶無くてもしっかりしたお子様だったわたくし。
マナーも子供のものなら完璧だった。
大人の様に振る舞うからお母様はこんな感じだけど使用人からは気味悪がられていたと思う。
え?曖昧かって?
一々使用人の機嫌を伺ってどうすんの。
わたくし貴族なのよ?

「わたくし達はね、レティ。魔人になってしまったのですって。」
「っ!?」
「ね?レティちゃんなら理解するでしょう?」
「あのな……レティシア、だったな。」
「?」
「俺はアノン。アノン・ベルカスターだ。」
「っ!!!」
「その様子だと魔王だという事は分かったみたいだな。」
「うぃ…」
「お前達が打ち捨てられていた村の程近くで俺は捜し物をしていてな。その時に溢れた俺の瘴気を取り込みお前達は魔神化した。しかもかなり上手くな。」

上手く?
ひょいとお母様からアノンに抱かれた。

「人間が強い負の感情を持って瘴気を取り込むと魔族となる。その反動か、魔族化した後は暴れるのだが…お前達を護るかの様に繭が出来ていてな。それが良かったのかは分からないが、暴れることなく…それ所かお前は俺の特徴まで受け継いで変化してな。」
「とくちょ?」
「そうだ。魔人族を統べる魔王たる証、その濃いアメジストの瞳だ。しかも更にその上、ガーネットまでな。ガーネットかアメジストの瞳を持つ者は魔王の眷族だ。魔族化した時の姿でそれぞれの魔王の元に送られる。お前達は俺と同じ魔人族の中でも少数の魔幻龍族。魔人の特性と、龍、幻獣種と同じ力を持っている。」

なるほど。
それで何故こんな状態に?

「ユフィは俺の妻とした。あのままだと他の魔王の妾として召されるだろうが、俺の力を受けているのだ。そんな事許せるか。」

なんと!?
ん?つまり?

「ユフィの幻花蝶と俺の魔龍を持つお前は俺達の子となる。」
「なんと!!」
「そして、次期魔王がお前だ。…ここは魔大陸の魔幻龍の国。ここがお前の住むべき国だ。」
「…っ!」

魔大陸と言っても見た目は変わらない。
ただ、人間以外が多くあり、基本寿命も違う。
だが。

「…あいつら、ゆるせない…」
「レティちゃん…」
「おかあさまをあんなふうにしたヤツらはゆるさない。」
「ああ。盟約を守らなかった」
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ