□現代ファンタジー
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私には幼馴染みがいる。
家が隣で、親がお互い飲食をしていて、夜は大抵一人だった。
その内にお互いが一緒に晩ご飯を作るのも当たり前になっていて。
傍にいるのも当たり前だった。
高校に入ってそれが変化した。
家に帰ってくるのが遅くなり。
元々喧嘩する様な不良でもあったけど、高校に入ってからが多くなった。
当然、幼馴染みだからという理由で狙われる事も少なく無かった。

私達には能力がある。
昔は幼馴染みと練習して。
高校生になってからは報復やらでやってくる不良達が相手だった。
わりと珍しい能力を持っているから負ける事は無かったけど。

18歳の冬。
大学1年生。
この頃には幼馴染みとは会う事が殆ど無かった。
そんなある日、両親が揃って他界した。
優しい人達だった。
押し入って来た強盗に殺されたのだ。

葬式も、両親が営む喫茶店の常連さん達が来る度に涙が止まらなくて。
途中で倒れそうになった時。
駆けつけてくれたのは幼馴染みだった。

傍に居て当たり前だったのが、淡い恋心が大好きに変わる瞬間だった。
けれどもそれを打ち明ける事はしなかった。
彼はチームを作り率いる立場だったから。
隣にはいつも綺麗な女の子がいたから。

家も引き払って。
住む場所を探して。
一人暮らしの部屋に慣れるのにはすぐだった。
バイトと大学に明け暮れたから。

「醤油ラーメン一つとギョーザ二人前。」
「はーい。」
「しっかし水華ちゃん強いんだからどっか入れば良いのに。」
「あはは。個人バトルで十分ですよ。店長醤油ラーメンとギョーザ二人前!」
「はいよ。」

バトルとは。
能力社会の中で能力でやり合う人達が増え、色々不具合が起きた。
犯罪、器物破損、その他。
それを解消する為に、世界政府が打ち出したのは、世界規模での統一システム。
その一つが導力システムであり、その末端が能力開発とバトルである。
バトルすれば報奨金が手に入る。
また導力システムにより魔物のデータも手に入る。
チームはチーム同士のバトルを主に行うもので、四年に一度世界大会がある。

『チーム・ゴールデン・ウルフズ世界第三位!流石強い!』
「はぁー…遂に世界かぁ。」
「全く家に帰らねぇ放蕩息子がよぉ…」
「…おじさん、タバコ辞めたんじゃなかったっけ?」
「あぁー…そういや豚肉の仕入れ行っとかねぇとなぁ…」
「もう…」

幼馴染みは。
日本強豪チーム・ゴールデン・ウルフズのリーダー東雲玲士。
そしてここはその彼のお父さんが営むラーメン屋さんである。

「え、なに、ゴールデン・ウルフズのレイジっておやっさんの息子なの?」
「さぁなぁ。」

なんてはぐらかしてる。
お互い23歳だ。
そろそろ私も将来を考えないといけないかな…
逃げてばっかはだめだよね…

そんなある日。
大学の友達と遊びに出た。
そしたらチーマーらしき人達に絡まれた。

「お姉さん気が強いねぇ!俺らを一人で相手するって?」
「良いねぇ。」

やってもいいんだけど、友達は能力レベル低いからどうしよう…

「…水華?」
「?…あ…玲士…」
「げっゴールデン・ウルフズ…」
「…」

あ、凄い不機嫌。
なんでいきなり不機嫌??

「…おい、水華!!」
「は?」
「てめぇ俺様に黙って消えるとはどういう了見だ!」

は??

「いや、ちょっと言ってる意味が分からない。」
「家が急に売りに出されて消息不明になりやがって!!」

いつの時代の話をしてるんだ…
ていうかおじさんもしかして話してない?

「消息不明って…おじさんにはどこに住んでるかは言ってるけど…」
「は!?…あ・のクソ親父…」
「あーまた弄ばれたねぇ…」
「ちょ、ちょいちょい?」
「俺ら忘れないでくれますー?」
「あ。」

で、あの人達は玲士が片してくれたけど。
今度は玲士に絡まれている…

「で、どこに住んでやがる。」
「ええ…なんで言わなきゃいけないの…」
「言わなきゃいけねぇ事だろが。」

周りが何事かと思って見てるよ…
とりあえず落ち着いて話せるように、と玲士のチームの人が場を取り成してくれた。
友達も普段チーマーに関わる事がないから怖がっていたけど、今は大丈夫そうだ。

「で。」
「いや、だからなんでそんな偉そうなのよ。」
「俺様だからな。」
「意味わからんわ。」
「っていうかぁ、その女誰よ。」
「あ?」

いつもテレビで見る女の子だ。
あれ?でもなんか思ってたのと違う、な?

「俺様の嫁。」
「「はぁ!?」」

いや、いつ嫁になった!

「あん?んなもん昔からだろうが。」
「なった覚えは無いわ!!」
「ちょっと!レイジ!あたしというものがありながら何…」
「…は?てめぇを俺様の女にした覚えはねぇわ。」

あ、あー、なるほど。
温度差はこれか。
いや、今はそれを言ってる場合ではない。

「大体俺様の裸の隅々まで知ってるのはお前だけだぞ?」
「小学生ね!一緒にお風呂入ったのは小学生の頃の話でしょ!!何よ隅々って!」
「俺は覚えてるが。」
「忘れろ!!」
「で。どこに住んでやがる。」
「言う必要ある!?」
「あるに決まってるだろ。」

ああ、うん、こういうの玲士だよね!

「まぁ言わなくてもこうして発信機付けりゃ良い話だけどな。」
「それは犯罪でしょ!!何すんのよ!!」
「………」
「ちょ、何!?」
「醤油…お前今どこで働いてんだ。」
「だから、それも言う必要ある?」
「………分かった。クソ親父だな。」

結局自分で分かるんじゃん。

「言う必要、ないでしょ。」
「そりゃまぁお前の事ならお見通しだからな?よし、帰んぞ。」
「はぁ!?」

私は!今!友達と!遊んでるの!!

「…」
「「「あ、わたし達今日これで解散なんで。」」」
「皆!?」
「「「また学校でねー。」」」

逃げた…
しかもあれは多分学校で質問攻めにする気だ。
…しばらく休んでやろうかな…
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