□転生令嬢
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「ふぅーこんなものかな。」

私レティシア。
前世地球日本の一庶民、現在魔力ある世界のアールスローム王国の貧乏男爵家の娘。
何も無い領地で、日々自分や領民達の食事を求めて森に出ています。
それくらい領収も無いし、貧しい。
昔昔やってきた王都の騎士様と魔術師様からかなり珍しい資質があると聞いたが、うちのお父様にその判断は出来ない。
継母はこの貧乏っぷりでも贅沢しようとするし、義妹もそうだ。
見た目がなんだ。
見た目だけで貴族やれたら苦労はせんわ。
ちなみに継母と義姉は平民です。
書類上、貴族の仲間入りすらしていないのに、毎日やれ舞踏会やらなんやらと…
おかしくて笑えます。
見た目に絆されたお隣の幼なじみというものも最早私自身は縁を切っている。
と、こうして民達の為に日々走り回っているが、領民は何故か義姉の味方。
やってくる冒険者の方がよく分かっている。

そんなある日。
このクソ田舎にやたら豪華な馬車一つ。
紋章を見て驚いた。
なんせそれは我が国の貴族が知ってなくてはならない高貴な家のものだからだ。
急いで帰って、泥だらけだが気にせず戻ると、家族が揃っていた。

出てきた方は、やはり王族。
こんな貧乏で辺鄙な所の男爵家でも、そのご尊顔の姿絵等は出回り顔を知っておかなくてはならない。
お母様に言われて王家の方の顔は幼い頃のものだけど頭にしっかり入れてあるから。
カーテシーも久しぶりだけど、やった。

「…男爵。これはどういう事かね?」
「っ、こ、これは…義兄上…殿…」

え?
お父様がそういう人は1人。
王子殿下の傍に控えていた人。
隻眼の、黒い服の騎士…は、一人しかいない!

「伯父様!?」
「久しぶりだなレティシア。で、何故お前だけが薄汚れておる?」
「それは…今まで森に入って今日の食材を…」
「レティシア!!」

なによ。
本当の事じゃない。

「…集めていたものか?」
「あ、いえお気になさらず。そっちは民達に配る分ですから…」
「民達にも?」
「まぁ…戦えぬ民達ですから…」

本当の所は、農作が上手くいかない我が領地で、狩人になれば話しは早いがそうしない輩が多く餓死寸前の奴らが多い。
とはいえ一定数は私の指示で森に出てはいるが装備なんて揃えられない僻地だからね。
貧乏だし。
私?私はドレスだろうが戦える人間だしね!

「…随分とそちらは良い服を着ているな…」

王子殿下の一言。
突き刺さるわぁ…
まぁ義妹は聞いてないが。
王子殿下に惚れたって何をしても貴族の子供じゃないから夢すら見られないのにね。
うちの国そういうのは厳しいから。

そして応接室に案内し、お茶を用意する。
侍女?そんなもんうち抱える余裕ないし。

「そ、それでどうされたのですかな?」
「クロノワール男爵。貴様に陛下の決定を伝える。」
「け、決定!?」
「今しがた、領民の様子も見てきた。貴様には補助金が出されていたと思うが、改善が見られない。」
「それは…」

ギっと睨まれたけど、そもそもそれお父様の仕事だから。

「貴様が何もせず、令嬢を働かせるという貴族に有るまじき失態を認めた。…、レティシア嬢。」
「はい。」
「一つ聞きたいが、令嬢は領民をどう思うかね?」

どう?

「どう、とは?」
「ふむ。抽象的過ぎたな。この家の跡継ぎは君だ。その君が領地を継ぐ時、彼らは必要かね?」
「いえ、一部を除いて要りません。不作を理由に仕事しない者たちですから。」
「レティシア!?」

いや、だって実際そうだし。

「一部?」
「はい。同世代と年下の者達はこのままではいけないと思い、共に森に入る訓練をしました。それと、不作も領民達の不出来が原因です。」
「何?」
「だって、私が作った畑はしっかり実っていますもの。私と、畑を手伝った者の税として売り納めております。」
「微々たる税の納入の現実はそれか。それ以外は要らぬと?」
「私や畑に携わった者達が幾ら諭しても自らの下手なやり方を変えず「出来ませんでした」ですので…正直、民と言えどやる気のない者を導く事は出来ません。ですので要りません。」

土地自体はかなり肥沃な土地だ。
育たないはずが無い。

「なるほどな。」

それで何故王子殿下がここに…
没落決定なら城の文官が来るものでは?
そうなったら冒険者登録して自分の思い通りに暮らせるんだけど…

「陛下の決定を伝える。アダル・クロノワール。貴様に市政能力が無いとし、嫡子レティシアへの爵位相続及びアダルの追放を決定された。この状況を鑑みて、私が見繕った使用人を与える。」
「なに!?」
「え…」
「お、お待ち下さいまし!嫡子というならこのアメリアも…この子もクロノワールの娘ですわ!!」
「…何を言っているんだ?」
「クロノワールの娘はレティシアのみ。平民の血の繋がりがない人間は貴族ではない。」
「は?」
「レティシアは、アダル・クロノワールと現将軍カギル・エスティオン侯爵の妹、アルティミシア・エスティオンの娘。正真正銘貴族の娘。それにデビュタントも数年後控えている。」

そう、まだ15ではない。
今10歳ね!
冒険者登録も武器見つかればやるつもりだし…
今までは色んな事の制約があったけど…

「この土地はエスティオン侯爵領地となる。施策等は伯父から聞け。」
「だから伯父様来たの?」
「ああ。」

ふむ…なら…

「じゃあお母様の封印解いてくれるの?」
「ん?………っ!?あのバカ娘!!娘になんという封印術掛けておるんだ!?」

だよね。

「ふ、封印術?」
「あれ、知らなかった?産まれた時の魔力が馬鹿高いからお母様が封印掛けたって。封印したらお父様の茶髪だけど、封印解いたら産まれた時の姿の銀髪に蒼の宝石眼に戻るんだって。死ぬ前にお母様が教えてくれたよ。」
「アルティミシアーーーーー!!これは魔王封印に使うような封印術だぞ!!馬鹿か!?馬鹿なのかアレは!!」

お、おう…
ん?

「魔王封印?そんな封印じゃないんじゃない?今私普通に魔法とか使ってるよ?」
「っ!?」
「随分魔力が高いようだな?流石元聖女の娘だ。」

ちなみにお母様、そもそもは創世教会という国教の教会で聖女してました。
そして婚約者に裏切られお父様と無理やり結婚させられたのだ。
ちなみに裏切った婚約者というのは元王族。
目の前の王子殿下はその元婚約者の弟の子供になる。
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