□転生令嬢
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マーセルナード

わたくしが今世で生を受けた世界である。
この世界では魔力がある。
それを知ったわたくしは大いに喜び、かつ貴族であるからレッスンなども頑張りつつ、魔力を高めてきた。

わたくしが産まれたこのアールスローム王国の貴族には重婚制度が設けられている。
必ず二人伴侶を迎え、当主継承に血を絶やさない様に、との決まりがある。
今世ではわたくし伯爵家に産まれました。
当主から見て、隔世継承がアールスロームでの決まり。
つまり、当主はお祖父様で、一番目の子供の、第二夫人の娘のわたくしも当主候補です。
そんな6歳のある日。

お祖父様の三人の子供と、その子供が一同に集められた。

「本日をもって、当主継承の選出を始める。それぞれ三人ずつ子がおる。その中からワシが見定めた者が候補である。」

ふーん。
まぁわたくし6歳だし。
ムカつくけどお兄様とお姉様がいるしないかなー。
なんてのんびりお茶飲んでたら。

「まず、マレザードの子。候補は…」
「(勿論この俺様だな。)」
「(馬鹿なお兄様でなく、幼いレティシアでもなく、勿論このわたくしよね!)」
「次女レティシア。」
「「「「なに!?」」」」

あ、初めてお父様とお兄様達とハモったわ。
いや!そうでなくて!

「次、バレンの子は長子アインザック。」
「はい。」
「頑張るのだぞ。」
「はい、父上。」
「オレマードの子は次男のレイナード。」
「はい!」
「しっかりな。」
「うん!」
「お、お、お待ちを父上!!」
「…なんだ。」
「何故グランやアリアナではなくレティシアが!?」

そうだそうだ!
わたくしは今世では冒険者になりたかったのに!!

「選出の目安は魔力量だ。魔力量だけで見るならば、レティシアは当主に一番良い。」

なんと!?

「そんな!?よりによってこの子が!?母親は平民なのよ!?」
「穢れた血を流すこいつを継承者にするのか!?」

あーあ、自分から墓穴掘ってやがんの。
まぁそれがお兄様とお姉様ですし。
お祖父様も叔父様達も、勿論従兄達も顔を顰めている。
何故か第一夫人もその子供も平民を忌み嫌っているけど、この国平民だからと差別したりするのは少ない。
あれ?
なんでお父様も驚いてるんだ?

「…お前達何言ってるんだ?ユリシアナは侯爵家の娘、れっきとした貴族だぞ?」
「「え?」」
「というか、私が平民と子を成そうと何故それが穢れた血となる!貴族に見初められる平民は何か突出した物があるから選ばれるのだ!何を勘違いしておる!」
「「っ!?」」
「はぁ…」
「だ、だって…あの女を迎え入れてからお父様はお母様の所に来ないじゃない!!」
「当たり前だ。不義を行った女だぞ?迎え入れてやっただけでも、子を成しただけでも有難いと思って貰わねば。」

そう言えば良く思い出してみればお父様は常にわたくしとお母様のいる別邸にいつもいるね?

「当たり前だ。ユリシアナとは子供の頃から付き合っていたからな。マリオラとの強引な婚姻が無ければもっと早くに迎え入れていたわ。」

そうなんだ?
わりと気位高いお父様。
だけど強気だけどちゃんと物事を見てたりするから、営んでいる商会も安定している。
今世では伯爵家の中でもお金持ちなのです。

「ふぎ?」
「お前はまだ知らなくていいぞ!!」
「…浮気してたって事?」
「なんでそんな事知ってるんだ!!」
「カネックが集めてる小説はそんなの多かった。」
「何を読ませてんだアイツは!!!」
「君達の母親はね、兄上との婚姻の前に婚約者がいるにも関わらず他の男と遊んだんだよ。それが理由で婚約は破棄、我が家はそんな人間を押し付けられたんだよ。」
「父上!レティはまだ6歳だ!」
「選出は変更はない。これより領地をそれぞれ三分割し、それぞれに与える。期限は三年。三年の内に良く治めてみせよ。」

ざっくりしてんなー…
治めるって事はあれだよね、法律とかそんなの。
ていうか第一夫人ってそんな人だったんだ。
割り当てられた領地の内訳を見る。
領地は一つではなく確か五つある。
その内の一つ、海と山に挟まれたダンジョンもある領地がわたくしに割り当てられた場所。
明日から領地に行ってってしなくてはならない。
一応全ての領地はお父様とお母様と回ったから知らない事はない。
わりと高位ダンジョンに囲まれているから、魔物が強くて、でも発展が薄い地域ではある。
冒険者制度はある。
ギルド制度もあるけど、まだ我が領地はどこもギルド支部はあっても定着する冒険者パーティーはいない。
一応拠点として冒険者パーティーが定着する為の国と領地の法律がある。
だけどそれなりに高位ダンジョンの為、高ランクパーティーが少ない故に寄り付かない。
必要な事はいっぱいある。
そもそも我が領地は抱える冒険者も少なければ、そもそもの領収も少ない。
だからお父様は商会を立ち上げた。
商品を売る手筈は整っている。
物がない。
ならば、作るまで。

魔力があるせいか昔のように潮風があるからうんちゃらとか、そういうのは少ないと思う。
前にも領地を回って「海辺でも普通に植物あるじゃん」って感想があった。
なんだったかは忘れたけど、流石ファンタジー世界だな、とは思った。
そうそう、海マスカスは塩気のあるマスカットだなって思った。
しかもただ自生している野生の物を採って来ただけのもの。
ここには魔道具もある。
そして作れる。
海側は海風のお陰で「海なんたら」という物の名前の物が多かった。
図鑑で見ても固有種が沢山あった。
それは強みだ。
山側は栄養豊富な低木や草が沢山。
しかも高級お肉のロンカスの野生生息地でもある。
ロンカスは倒せば牛の素材…角や皮、蹄の他にもお肉とミルクを出す。
高級です。
それとウコッケーというコッコの上位種もいる。
うん、ちょっと頑張ってみるか!


こうしてわたくしのいきなり領地経営シュミレーションが始まったのだった。
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