□転生令嬢
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転生。
死んだ魂が浄化され、新たな生を受ける事。
その際には全然の記憶は無いとされる。
ええ、自分もそれを信じておりました。
産まれた今この時まではね!

「おお、伯爵の銀髪と奥方の瞳を受け継がれたのですな!」
「そうなんだ。もう可愛くて仕方ないんだよ。」

前世の記憶があるからか意識的に周りを見れる。
今世でのパパとママはとても美人。
銀髪で薄い水色の瞳のパパ。
黒髪で蒼い瞳のママ。
とても優しい。
が。
パパには異名がある。
それは…

「…」
「おい、そこのお前。」
「はっはい!」
「今そのカップに何を混ぜた?」
「え、えと…奥様は砂糖を2つと…」
「あら。わたくし甘いのは苦手ですのよ?誰から聞いたの?」
「え!?じ、侍女長に…」
「どうなの?マーサ。」
「指示した覚えはございません。」
「っ!?ま、待って下さい!侍女長はリアナでは!?わたくしはそのようにリアナから指示をっ侍女長もリアナだと聞いております!」
「漸く尻尾を出したか。」
「マーサ。この子は新しい侍女でしたわね?」
「はい。本来ならばこのような仕事はまだ与えません。」
「わ、わたくしはっ」
「二度目はない。マーサ、再教育を。」
「はい。」
「ふふっあなた。部屋が凍ってしまったわよ?」
「ああ、すまん。ついな。」

そう、パパもママも氷属性を持っていて、パパは宰相補佐という重要な仕事に就いていて、ママは社交界の華の一人。
つまり敵も多い。
こうしてスパイやら毒やら入れ込まれるのも日常茶飯事なのです。
付いた通り名が氷の伯爵。
ママは氷の伯爵夫人だそう。
そして、産まれたこの私。
氷属性持ちは子供が出来にくい。
総じて魔力が高い為と言われており、パパもママも結婚から七年目にして漸く産まれたのが私なのだ。
溺愛にもなるよね。
その私。
パパの煌めく銀髪と、ママの深くて蒼い瞳を受け継ぎ、肌は真っ白。
健康的に白いよ。
大きな目だし、厚くも薄くもない唇。
ウェーブヘアなのか侍女が抱いてくれた時に見えた私の姿はうねうねしていた。

そして、やはり魔力が高いようだ。
氷属性も持ってるから差程寒くはない。
更に言えば、他にも三つ持っている。
水と木と雷。
産まれてすぐの検査でそう出ているから、たまーに使ったとしても問題なし。
驚かれる事も無かったわ。
流石ファンタジー。

「だっ」
「ふふっレティもパパの氷がお気に入りね?」
「だーぅっ」
「そうか?ママの氷も気に入っているようだが?」
「だっ」
「ふふっ」

そんな今世での人生がスタートした訳です。




あれから18年。
わたくしも貴族令嬢としてすくすく育ち。
わたくしもクロノワール伯爵家の一員として「氷姫」なるあだ名が付けられました!
わたくし、存分にお父様とお母様を見習い、気に入らないものにはブリザードをかましてまいりました。
お陰で虐めやらなんやらはありませんわ?

15歳から18歳まで通う学院では、手癖の悪い婚約者を撃退しつつ、高位貴族にすり寄ろうとしている阿呆娘を撃退しつつ。
氷姫に相応しい立ち居振る舞いを身につけました。
一部ではわたくしを恐怖し、一部ではちゃんと優しくしてあげたから人気もあってよ。
無事に学院を卒業したものの、わたくしのお相手はまだまだ見つけなくてはなりません。
クロノワール伯爵家に相応しい殿方を婿として迎え入れなくてはならないからです。
なんせ子供はわたくしだけだからね。
つまり、伯爵家を継ぐに足る人間かどうかも見極めなくてはならないし、もしもの為の当主教育も行ってきた。
まぁお父様は相変わらずわたくしに激甘ですから?ある程度は大丈夫。
お母様ともいまだラブラブよ。

そんなある日。
お父様に連れてこられたのはお城。
はて、お城?
お茶会…とかでも無いようです。

「お待ちしておりました伯爵。」
「ああ。久しぶりだな。」
「そうですな。」

この方…師団の方?

「レティ、この方はライモンド侯爵だ。」
「やぁ。」
「娘のレティシアですわ。」
「この方はな、私とリニアンを引き合わせてくれた方なのだ。」

お母様と?

「伯爵は昔から女運が悪くてねぇ。二度結婚してどちらも宜しく無くてね?」
「…」
「子供の出来にくい氷属性持ちだからね。占術で相性の良い人を探してあげたのだよ。」

なんと!!
あ、でもこの世界の占術は魔力があるからかなり正確だ。
ただ、それを読み取る知識やらが必要故にかなり狭い門である。
まぁ簡単なのならわたくしも水属性があるからやるけど。

「…でも、水占いでは相手など見えませんでしたわ?」
「ああ、君は水と木属性を持っているんだね。ただ水占いは気まぐれだからねぇ。手順を踏んでいたとしても「良き日」に施行しないとあまりちゃんと占えないんだよ。」
「まぁ、そうだったのですか…」
「そう。私は様々な占いが出来るからね。少し待っていてくれ。」
「ああ。」

占術、と言うよりは医師の診断に近い事をなされていました。
そうして出たのは。

「出ました。クロフォード家の次男ですね。」

ピシリ。
と、お父様が凍りついた音が聞こえた。
クロフォード…つまり、お父様の上司であり、この国の宰相閣下。
その、ご子息。
次男…ならばジゼル様ね。
同い年になり、今は騎士団にお勤めだわ。

「嫌がっても、他に候補もいないんだから。」
「断り続けて来たのに…」
「はいはい。じゃ、呼んでくるよー。」
「…」

お父様から冷気が漂い始めた。
そんなに嫌なの?
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