大家族

□仮
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この世界には本の少し、不思議な力を持つ人がいる。
そんな世界で私達は生きている。


◇◇◇


今日、私は溜まっていた有給を取り、久し振りに旅行に来ていた。

30歳を目前に控え、両親からの催促とため息を交わしつつ。
漸く成人した弟と、まだまだ中学生な妹の面倒を見つつ。
私は上京するか否かを悩んでいた。

そんな事をぼぅっと考えながらチェックインを待ってると、両親の後ろに別の三人連れの家族が並んだ。

「…」

その中の一人、どうやら息子さんの様だが…見たことあるような、そんな気がした。

「あぁ、スミマセン。」
「ああ、いぇ大丈夫です。」

両親が頭を下げて戻ってくる。
ふと、息子さんであろう人と目が合い軽く会釈をする。

「あっよーやく戻ってきた!」
「待ちくたびれたぁ。」
「って自分の荷物持ちなさいよ!」

さっさと手荷物だけ持って行く弟と妹に気付き両親の分まで持って追い掛ける。
何度も言おう。
私は30歳を目前に控えている。

だが、あまりにも成長力に見放された私は僅か14歳の妹よりも小さい。
たまに長女なのに年下に見られる。

…お酒好きだし。
喫煙もする。
悩みは未だに年齢確認されること。


ぁ、慣れてるけどね。

とにかく就いた仕事のお陰でパワフルになったし、人と接するのにも流石に余裕が出てきて最近は聞かれる事も少ない。
ふと、なにかが気になって振り向く。
また、あの人と目が合った。

…どこかで見たことあるようなその人は私の頭の片隅に残り続けた。


◇◇◇

「荷物置いた?」
「置いた。…捨ててやろうかと思った。」
「まあまあ。ほんなら行こか。」

結局持たされ続けた荷物を置き、観光と決め込む。
と、先程の家族が隣の部屋から出てきて。

「あ、どうも。」
「あ、いえ。」
「これからお出掛けですか?」
「ええ、そちらも?」
「はい。そうなんですよ。」

うちの父はちょっとした店の店長だ。
見知らぬ人と話すとか雑作もなく、結構知らない人とも打ち解けられるすごい人。
黙ってたら厳ついおっさんだけど。

「今日は上の娘が久し振りに長期で休みが録れましてね。」
「あぁ、うちも上の息子が…」

母も母親同士で何故か打ち解けている。
…普段の人見知りはどこに行ったのやら。

「お、浩輔!」
「なあ水華!」

…呼ばれて固まるのは私達の…



…浩輔…?


「なんや、こちらさんと気い合ってな!今日一緒に
回ろうゆうことなったんや!」
「…はぁ?」
「そんなわけで自己紹介と言うわけだ!えー、うちの長男の浩輔です。年は取ってますがね。」
「いや、一言多いから。」

…この顔

…この声


…浩輔さん!?

「…と、りうみ…浩輔さん?」
「「んん?」」
「はい?そうですよー?」
「せ、声優さんの!?」
「はいー。」

そりゃ見たことあるわな!
なんせ大ファンなんですから!!

「あの、その、いつも聞かせていただいております…」
「あはっありがとう!」

…どうしよう!
生鳥海さん可愛すぎる!!

「あ、うちの長女の水華です。あっちが長男でこっちが次女です。」
「どうも。」
「こ、こんにちわ…」
「うん、お姉ちゃんの後ろには隠れきれてへんけどね。」
「姉ちゃんのが小さいもんな。」

と、間が降りる。

「長女さん?」
「はい。」
「えと、おいくつ?」
「もうすぐ30歳なんですわー。せやのにまだ貰い手が…」
「…(やかましいわ)」
「まぁ、かわいらしい。うちの浩輔ももう良い歳なんですけれどもねー」
「…(うるさいよ)」


これが初めての出会いだった。
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