内緒の時間

□転生令嬢
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私が何かしたのだろうか。
両親から疎まれ、弟妹からも疎まれ、そして婚約者からも疎まれ。
何故?

そんな事を考える事は最近ない。
ただ、王宮の夜会でくらいその態度はやめた方がいい。

「…レティシア!貴様との婚約を破棄させてもらう!!」
「…そうですか。」

本当に馬鹿だ。
家族とこの婚約者だけは。

「…陛下。」
「うむ。婚約者レナード・ウィンストルとの婚約は……知らなかったとは恐れ入る。」

陛下の言葉に私の家族と…そう言えばそんな名前でしたね。
レナードがポカンとしている。

「レティシア嬢とレナード・ウィンストルとの婚約は既に三年前にレティシアからの申し出により破棄されておる。なんだ、いつまでもレティシアと婚約していると思っていたお前に驚くわ。」

そう、さっくり前世の記憶を取り戻した私はそんな家族を見限り、貴族令嬢として味方を増やした。
結果、私は…

「ふむ。ではまずは陛下。レティシア嬢の「養子」先に我がミッドフォードが推挙させてもらおう。」
「行動が早いわミッドフォード!我がシュナーゼフ家もレティシア嬢を迎え入れる…」
「待て待て!我が…」

そう、王城で自分の価値を見せつけてやりました。
というのも、魔法と魔力があるこの世界でも食品やらなんやらは前世と同じ感じで発達はしている。
ただ、魔術はやはり人を選ぶのだ。
私は前世を思い出した時、図書館にまず通った。
そして知ったのは、魔術がある故に医療…特に薬は衰退気味という事。
数少ない薬を増やす事はしていないが、薬効を高めてみた。
魔力がある故に魔力を用いて薬を作っただけ。
その為に魔術を勉強して魔力を高めて、時に騎士団がいる所に「偶然」を装い出没したりなんだり…
いやぁ裏工作は楽し…いえいえ。
まぁそもそもご飯やら出されてませんから。
てことで身内の恥をさらけ出しておいて、食事を求めて彷徨い出てみた訳ですね。
ついでに貴族方面でもあれやこれやをして味方を増やしておいた訳です。
魔道具作るのも楽しいし。
とまぁそんな状態で自分を売り出した訳ですから、養子にと望む声が高まった訳です。
しかし、一応婚約しているので下手な事は出来ない。
…と、そんな折、お忍びデート中の陛下と王妃様にお会いした時に陛下は何やら妙案を思いつきました。
はい、それが三年前。
その妙案にて私は晴れて婚約破棄がなり、陛下の…というか宰相様の根回しにてまずは養子先を見繕う。
それが、今。
虐待等を貴族が行ってそれを城で把握した場合、陛下の指示の元、その子供は名乗り出た貴族の養子となる。
それは規範で決まっています。

「では後程養子先は書類を提出してください。」

宰相様の一声にざわつきが収まりました。
となると次は夜会であるので。
ダンスを踊ること。
ここはまだ誰がとは決まっていない。

「牽制しあっておるが…」
「まぁ無理でしょうね。そもそもレティシアの不遇に忌避していた者達だ。なぁ?アミリア。」
「そうですわね。」

王太子殿下とその婚約者アミリア様。
次期王と王妃に相応しい方々です。
アミリア様は名乗りを上げて下さったミッドフォード家の公女様。
一番最初に私を保護した方でもある。
ミッドフォードとしては、嫡男もおられるし、公女様も王家へ輿入れが決まっていて安泰。
が、ここらでもう一発どこかの家との縁繋がりを望んでのもの。
とは言えそれはどこもそうだ。
元々生家では親戚もいない為にここまで養子にと望む声も多い。
本来ならまずは親戚からあたるものだが、その親戚は数年前に没落し貴族籍が無くなっている。
だから無理。

と、ふと騒がしくなる一角。

「あちらは…」
「先程遠征に出ていた騎士達が戻ってきて、急いで夜会に出てきた一団だな。相変わらず第一騎士団は人気があるな。」
「まぁ見目麗しくお強い方々ですもの。令嬢はそういう方も標的なんですって。ねぇ、レティシア?」
「らしいですね。お会いした事はありませんが。」
「会ったことはないのか?」
「わたくしが主に偶然お会いしていた方々は第五騎士団の方々ですから。」

実力と家柄、どちらも良いのが第一騎士団。
第五騎士団は下級貴族でそれなり力量の方々が多い。
第一は完全実力主義の騎士団ですから入るのに強くならなくてはならない…というのは聞いた事がある。
皆の憧れだそうだ。

「確かにな。」

ふと、その中の二人がこちらにやって来る。

「陛下、第一騎士団ただいま戻りました。急ぎましたが少しばかり遅れました事、申し訳ございません。」
「何、構わんよ。夜会自体は今からだ。」

申し訳ございませんねぇ、止めてしまって。

「こちらは…?」
「アミリアの妹になるかもしれない、レティシアだ。現在養子先の選定待ちでな。」
「レティシアと申します。家名は養子先が決まり次第名乗らせて頂きます。」
「そうか。第一騎士団団長ゲオルグ・ランバールだ。」

確か先日ご婚姻を結ばれたという…

「ランバール団長。フィリア様はお元気?」
「ええ。先日懐妊が分かり、この場は辞退させて頂きました。」
「おお、そうか!」

フィリア様はアミリア様の親友。
そして私を着せ替え人形にするのが大好きな方である…

「…」
「ふふっ良かったわね、レティシア。しばらく着せ替え人形にならずに済みそうよ?」
「いや…フィリア様は…多分ご懐妊なさっても……ふっ…」
「あらあら。レティは飾りがいがあるから仕方ないわよねぇ。」
「…ふっ…」
「(目が遠い…)」
「それと…初めて見るな?」
「はい。公式の場では初めてでしょうか。副団長のジゼル・クロフォードです。」
「おお、夜会嫌いのクロフォードの次男か。」
「嫌いではございませぬ殿下。少々私とは夜会の空気が合わないだけで…」

凄い笑顔で言ってのけたわ、この方。
そう言えば名前だけは聞いた事あるかも。

「…」
「?」

ん?今見られてた?
んん?今なんか既視感が…
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