内緒の時間

□転生令嬢
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今、目の前では乙女ゲームよろしく悪役令嬢の断罪イベントが起きている。
それを冷めた目で見つめるわたくし。
全くヒロインらしくないビッ…失礼、逆ハーを築き上げたとんでもない子爵令嬢。
その取り巻きの中にはわたくしの「元」婚約者がいます。
ええ、数ヶ月前に無事破棄と相成りました。
ええ、奴は気付いてませんが。
恐らくあのクソビッ…失礼、男好きの似非ヒロインも転生者でしょう。
わたくしと同じように。
ただ、わたくしは彼女のように誰彼構わずに男に媚び売る事はしません。
媚び売るのは権力者で十分。
愛など恋などは論外。

「茶番にも程がありますね。」
「まぁな…行くのか?」
「ええ。それがもとよりの目的です。では、各地の美味しい物情報をお待ち下さいませ。」
「ああ。楽しみにしているよ。」

わたくしが媚びを売ったのはあそこで罪もない侯爵令嬢を辱めている第二王子ではない。
第一王子にして王太子のヨシュア様だ。
五つ上の彼は素晴らしい才能を持っていた。
しかし、追随出来る者がいなかったのだ。

5年前、こっそりと家出の準備をしていたわたくしは何故かお忍び中のヨシュア殿下に捕まり…いつの間にか侍女として召し上げられていた。
予定していた資金が貯まったので、辞職し、元々なりたかった冒険者になる事にした。
婚約者?
いえいえ、政略結婚とはいえ家の為に動けない人間と結婚してもね?
それを理由に破棄してもらったし。

さて、と。
早速なのでギルドに行きましょ。
わたくし何になれるかなー…

ギルドでは魔道具で資質を見て最適な職をオススメされます。
そしてその中の物を選んで職業に就く。
生産職と戦闘職どちらもオススメされます。
中にはどちらかというのもあるようですが。

「すみません、冒険者登録に来たのですが…」
「はい。ではこちらに記入をお願い致します。」

お、中々好感触な受付さんですね!
必要事項はっと…
名前と年齢、出身地ね。

名前はレティシア・フィオレ・ティルフォード。
家出とは言いますが、一応殿下にお仕えしますから貴族籍を抜ける訳ではありません。
こんな事もあろうかと殿下は陛下と王妃様を巻き込んでおられます。
恐らく宰相様も噛んでるかと…
下手すると他の大臣とかも絡んでそう…
つまり、家出がバレても構わないのだ。
それにあの父が怒って勘当、貴族籍剥奪の申請をした所で握りつぶされる可能性が高いという事だ。
その時は新たに家名を…つまり、わたくしに爵位を与えるという事。
家では継母が自分の子供を可愛がってわたくし達にはぞんざいですが。
それを見て昔ながらの使用人はわたくしの味方。
わたくしを勘当しようものなら、一気に屋敷から使用人が消えるのだ。
何故そうなのかって?
侍女として召されたは良いけど何故か始まった筋トレやら初級魔術の講座…それと並行しての侍女教育。
その上何故かメイド時分には各部署にたらい回しにされ殆どの仕事は出来る。
良かったのは何故か…いや、メイドなら当たり前だけど、各部署…魔術師団、騎士団、薬事部、厨房、針子…などなど最低その部署の見習い過程まで終わらさせられるという無茶ぶり。
早い五年間だったわ。
15になり、貴族ならば二年間の学院入学に関しても、自分で払える金額が魔法銀行口座に貯まっていた。
学院にいる間は城で学べなかった魔道具部門を専攻した。
…まぁ魔術学科の淑女科だから制約もお金の出費も大変素晴らしいものでしたが。
お、魔法銀行口座の記入もしないとなのね。

「口座をお持ちなのですか?」
「ええ。…行儀見習いとして…10からついこの間まで侍女をしていましたから…ええ…」
「そうなんですね。ではこちらの説明は省いても大丈夫ですね。では、まずは依頼の仕組みから。この後受けられる資質検査の後、出た結果の職に就いてもらいます。それでギルド登録は完了となり、冒険者証が発行されます。戦闘訓練はいかがでしょうか?」
「…この魔物の基礎知識だけで。」
「かしこまりました。予約を入れておきますね。そこまで完了すれば、依頼を受けられるようになります。登録したては、余程の事がない限りDランクからのスタートですので、Dランクボードから受けたい依頼の紙を取って、受付まで。受理処理をして、依頼に見合った仕事をし、提示された仕事をする事になります。登録完了時に、初心者応援キットとしてマジックポーチとモンスターカウンターが支給されますが、あくまでも初心者用ですから、性能が最低レベルです。良い物を使いたい時は各自でお願い致します。見たところ普通の服装ですので、選ぶ職によってはギルド併設の鍛冶場で装備を揃えられます。初心者用でしたら支給なので無料ですが、勿論ご自身で揃えられても結構です。既に銀行口座をお持ちですから、こちらのギルドでの円滑な金銭取り引きに頼もしいマジックウォレットもありますが…」
「マジックウォレットは持っているわ。」
「では、そちらの登録を致します。」

提出なのね。
まぁ下手に改造とかは出来ないわよね。
なんせ城の魔術師団の皆々様の特殊改造防止魔術掛かってますし。
城の支給でしたし。
説明を受けて、いざ資質検査よ!!
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