内緒の時間

□異世界転生
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事故にあった。
でも、まぁ普通で平凡な人生の幕引きにしては華々しいものだと思う。
あんな風に私も動けたんだなって今更自分に驚いた。

交差点で、信号待ち。
勉強は嫌いじゃないけど、自分のペースで出来ない。
だからなのかいつも中の上の成績。
だからお母さんにはいつも怒られる。
お兄ちゃんはもっと出来たのにって。
当たり前。
私はお兄ちゃんじゃないから。

お父さんは何考えてるか分からない。
たまにお菓子くれる。
お父さんなりの激励のつもりだったんだろう。
お兄ちゃんは…どうなんだろう?
あんまり大きくなってからは関わる事が少なかった。
まぁ無関心なんだろうな。
大学も忙しいみたいだし。

そんな事を考えてたら悲鳴が聞こえて、トラックが突っ込んで来るのが見えた。
でも、逃げ始める人の中で、押されて転けた男の子がいた。

考える間もなく、私はその子を投げ飛ばした。
あんな力があったんだなぁ、とか、死んだら幽霊になるんだー、とか。
つらつらと自分の死体を見下ろしてそう思った。

「うん、あの状況じゃしゃあないけど、子供を突き飛ばして逃げるってどうなんだろうね。」

道徳では自分より弱い者には手を差し伸べましょう、なんて言ってても。
所詮は「学校の授業」なんだなぁ。

「おねがいっお姉ちゃんを助けて!!誰かぁ!!」
「…無理だよ。…他に幽霊っていないんだなぁ。」

どうやら死んだのは私だけだったみたいだ。
救急車が来て。
もう死んでるけど、あの男の子が中々離れないから一緒に病院に。
身体動くと幽霊の自分も動いて面白かった。

「ダメです!完全に心停止してます!」
「っ…まだ、だ。着くまでは…」

救急車の中で処置してくれる隊員さん。
ありがとう。
もう死んでるけど。
結局病院ですぐに死亡診断されて。
警察やらが来て、持ち物とかで誰か特定して。
そしてお父さんとお兄ちゃんが来た。

「むす、娘は…」
「残念ですが…即死状態だったようで…」
「そんなっ!!」
「なんで!!病院のお医者さんなのに、なんでお姉ちゃん助けられないの!!」
「…あの子は…」
「事故当時の映像がありまして…防犯カメラに、お嬢さんが子供を投げ飛ばす瞬間が映っていました。」
「「え?」」
「あの子は、お嬢さんが助けた子供です。」
「そう…ですか…」
「っ、馬鹿野郎!!なんで、なんでお前が死んでんだ!!」
「晃久…」
「明日誕生日だろうが…折角、この俺がプレゼント買ってやったのに…何死んでんだよぉ…くそぉっ」

え。
お兄ちゃんが誕生日プレゼント?
今まで1度もくれた事ないのに。
すぐに火葬なのかなって思ったら、交通事故、殺人になるから色々調書を取らないといけなくて。

結局自分のお葬式を見たのは二ヶ月も後だった。
幽霊でも死体安置所は怖いんだね!!
段々と動ける様になって、その辺動いてみた。
二ヶ月も放置されてたらね。
この際なので家に戻ってみた。
壁通れるもんだねー。

「…あたしが…あたしが悪いのよ…」
「紗代子…」
「塾に行かせなければあの子がっ…」
「…っ、そんな事言ったってもう帰って来ねぇだろ!!」
「晃久、向こう行ってろ。」
「…」

こんな風に家族が家にいるの、いつぶりかな。
ここ数年は無かったけど。
そう言えばあの子はどうしたんだろう。
何回か塾で見たかも。
塾に行ってみよう。

「…大丈夫なのかしら、翔君…」
「事故にあった直後だってのに、親は…」
「前みたいな明るさが見えなくなってるのに…」
「ねえ…」
「あれでしょ?高校生クラスの子が助けたって…」
「水華ちゃんだね。あの子も色々お母さんがねぇ…」

ふぅむ…しかし私死んでるからどうしようも無いな。
次。
学校。
まぁ期待してないけど。

「おお、机に花瓶…本当にやるんだ。」
「先生ー。これ、いつまでこうしてるの?」
「ねー、毎日大変なんだけどー。」
「ちょっと、不謹慎な事言わないでよ…」
「普通は学年度末まで置いておく。そんな事も知らないのかよ…」
「っていうかクラスメイトが死んでるんだぞ。」
「だって、霧澤さんだしねぇ?」
「接点ないしー。」
「…」
「ちっ…」

びっくり。
派手系の人達の方が私の死を悼んでくれてるなんて。
そして友達って言ってたのがこうくるか。
まぁ、別に良いけど。

「…っ!?」

ん?
今、沖野君と目が合った?

「…そりゃ、成仏出来ねぇわな…」

お?
もしかして沖野君って霊感少年だった系?
不良で霊感って言ったらBLEACHだよね!

「…マンガじゃねっつの…」

あ、睨まれた。
ちょっと面白かったのでしばらく沖野君にくっついてみました。
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