内緒の時間

□転生令嬢
1ページ/23ページ

耐えた。
この、10年耐えた。
もう、限界である。

わたくしレティシアは16年前、魔力のある世界のとある王国の伯爵令嬢に転生しました。
前世での行いにより前世の記憶を持ったまま、高い魔力で今世に産まれました。

しかし、10年前妹が産まれてから家族からも使用人からも阻害…というか虐待を受け、早々に見切りを付けました。
今は魔術を勉強して、どうやって家を出るかを悩んでおります。

そんな中、いつも諸国漫遊に出ておられる第二王子、アレクシオス殿下が戻ってこられていると聞きました。
確か強いものと戦いたいとかで城を出てしまわれたとか。
これは、やってみる価値はあります。

夜会に久しぶりに出られるという事で探してみたら。
庭の方で休まれておられました。

最悪不敬罪になりますが、家に殺されるかどうかの違いですし。

「っ…、」

うん、先日の食事のせいで現在毒状態の高熱ですが、勢いを削がれる訳にはまいりません。

「アレク、シオス殿下!」
「…、なんだ。」

おお、凄い気迫。
流石外を旅されて来ただけの事はありますね。

「いつ、また旅に出られますか?」
「あ?」
「お願いします!どうか、わたくしも旅にご同行させて下さいませ!せめて、王都外の街まででも構いませんから!!」
「…は?」

ん?恐らくわたくしの言葉が予想外の事の様で、ポカンとしておられます。

「わたくし、家を出たいのです。その為の魔術を学んできました。」
「あー、興味本位に旅に出たいってなら…」
「興味本位ではありません!わたくし今すぐにでも家を出たいのです!このままではっ…、」
「おい?っ!?お前!」

まずい、まずいまずいまずい、目の前が揺れる。
今回なんの毒を入れてくれたんでしょうねぇ、あの侍女共は。

「妹を溺愛する両親、それを当然として貴族の責務も何もしない姉を辱める妹、主人の子として仕えない使用人…果ては料理に毒を盛るような使用人の元に、これ以上居たくないのです。噂や出任せばかりを信じ、人をちゃんと見れない他の貴族達にも期待はしません。わたくしはわたくしの力で外で生きたいのです…」
「お前…」
「…、耐性を上回る毒…本、当に何を盛って…っ…お願いします、アレクシオス殿下…わたくしを……」
「…、分かった。だが、まずは身体の事を考えろ。」
「っ!?あの!?」
「軽…なるほどな。確かに先程聞いたものと違うな。」

え?
な、何?
って、どこに行くの!?

「無論、毒を受けているのだ。侍医の元に行く。」
「殿下?」
「今しがた、オークローズ伯爵令嬢を「保護」した。何者かに毒を盛られている。…おい、耐性のレベルは。」
「え、あ…今、9に上がりましたが…」
「は!?9!?」
「え、毒耐性のレベルが9!?」
「え、ええ…毒を盛られるなど日常茶飯事ですし…」
「お前の家は…なるほど、伯爵には話しを聞かねばならんな。悪いがアッケロンを連れてきてくれ。それと父上と兄上もだ!」
「「は…はっ!!」」

薄れる意識の中。
前世、今世でも初めてのお姫様抱っこは、案外快適だと知りました。

そして、初めて意識を飛ばした。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ