内緒の時間

□転生令嬢
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ここに産まれた時。
今度こそは両親に孝行しようと決めた。
というのも、前世では20歳迄に死んだ。
交差点で横断歩道を渡っている時に車が突っ込んで来たんだ。
あれで何人も倒れているのを見た。
自分も倒れていたけど…

そして気付けばここに居た。
ここ、とはつまり今この場所。
世界には輪廻というものが存在するけど、まさか世界を超えてしまうとは思わなかった。
ここは私が夢見た世界。
魔力があって、魔法があって。
危険な魔物や、討伐する人もいる。

ただ…

「…ふっ…ただの平民なら大手を振って喜べたのにね…」

そう、呟くのも致し方ない。
私…いや、わたくしが産まれたのはアールスローム王国の一貴族、アレシウス伯爵家。
その、長女で第三子。
それは良い。
最初は「やっほーい!貴族じゃーーーん!」だったから。
ただ、五歳の時に現実を知った。
既に歳離れた兄達は騎士団と宰相府に勤めていた(この世界の貴族は15で出仕できる)ので、丁度10歳年上の次兄が出仕し始めた時。
お兄様達はわたくしのことをしっかり見てくださっている。
問題は両親と、更に後に産まれた妹だ。
それまでは普通の距離感だった気がする。
上のお兄様は既に12歳上のお兄様がデレッデレだったの以外は普通。
が、両親は妹が産まれた途端わたくしをぞんざいに扱いだした。
これにはお兄様達がキレてしまう。
両親は末の妹を花よ蝶よと育てた。

結果、出来たのは貴族社会では全く使えない娘だ。
腹の探り合いは勿論、将来どこかの家へ嫁いでも家の為の仕事も出来ない穀潰し。
しかも浪費という性質も持って。
で、お兄様達がブチ切れ気味の要因は、両親はおろか使用人のわたくしへの態度の悪さだ。
長兄のアシュレイお兄様は騎士団でも現在副団長。
既に個別に爵位を頂いており、タウンハウスからは遠いので騎士団宿舎にお住いです。
次兄のダミアンお兄様は宰相府の宰相補佐という大役を頂いている故か、宰相府にほぼ住んでいる状態。
時折お荷物と差し入れを持って行って差し上げます。

城へ赴けば自然と耳に入る色々な噂。
花よ蝶よと育てられた妹だが、貴族社会では評判最悪なのだ。
まぁ上手く転がしてやりたい輩は狙っているんでしょうが。

わたくし?
わたくしはそんなもの…ぶった斬ってやるので関係ありません。

「お聞きになりまして?アレシウスさんの…」
「ええ…姉君の婚約者を誘惑されたのでしょ?はしたないわよねぇ…」
「レティシアさん、お可哀想…」
「兄君達もついにブチ切れたって話だろ?」
「レティシア嬢ならお相手したいが…彼女はなぁ…」
「流石にな…」

とまぁこんな感じだ。
そう、先日わたくしの婚約者が妹と密室にいたのだ。
勿論すぐさま破棄しましたけど。
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