アイドル2

□ツキプロトリップ
1ページ/9ページ

ある日突然、異世界に召喚された少女。
でも皆が皆ハッピーな様にはならない。

「物語の様になんでも主人公の都合の良いようにはならない…ね…」

特に私は多分最悪のシナリオだろう。
助けてくれたと思った人物はクズだった。
私を売ったんだ。

地獄の様な場所で、地獄を過ごしてきた。

「グルルルル…」
「…」

たまたま見つけた真っ黒な狼。
怪我をしていて、手当をしたら懐かれた。
私はその子が私を買ったクズを食い殺すのをただ見ていた。

人間ではなく、飾る為に人形として飼われてきた。

無感動に「飼い主」を見詰めた。

「おや…これはこれは。」
「…?」
「こんな外国で可愛らしい子に会えるとはね。」

場違いなまでに「普通」。

だけどふっと微笑むとその人は私をここから連れ出してくれた。

「君は…なるほど。月の魔力で黄泉の国の門を開いてしまったのか。」
「?」
「名前は?」
「…水華…」
「そう、水華。いいかい、水華。この世界はね、たまーに別の世界から人を引き込む事がある。人間の世界で暮らす神々の魔力を与えられてね。…なるほど、外国だったから冥
府に繋がったか。」

この人は、私が別の世界から来たことを知っている。
この人…誰?

「…私かい?私はしがない芸能事務所の社長さ。」

楽しそうに言った…

「君、だからこの子は転生してこれたんだろうね。名前は?」
「…フェンリル…狼だし…」
「なるほどなるほど。さて水華。これも何かの縁だ。私の事務所に入らないかい?」

久しぶりに。
私は目を動かした。

「この世には二種類の人形があるよ。君の様に落ちぶれた人間の慰み物になる。もう一つは…」

にこりと笑った、三日月みたいな唇は多分一生忘れないと思う。

「自ら大衆の目に触れる人形になるか、だよ。」

つまりこの人は。
私を本気で事務所にスカウトしているらしい。

「…あなたがそう言うなら…」
「ん?」
「…私はあなたに拾われたから…あなたがそう言うならやる…」
「…それじゃ、さっそく日本に戻ろうか。」

この後。
この世界があの「ツキウタ。」の世界だと知って驚くんだが。
それはまだしばらく後の話しだ。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ