アイドル2

□SolidS
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始まりは、ほんの些細な事。

『ね、あんたのお弁当ってなんか男の子のお弁当みたいだね?』
『っ…あ、はは…お兄ちゃんのと同じ様に作られるから、さ…』
『えー?うちのお母さんは別に作ってくれるよー?』
『…お母さんにそんな器用なこと出来ないよ…』

そう、私は女。
兄は当然男。
なのに私は男みたいに育てられて。

一度吹き出した不満はとどまる事を知らなくて。

『もうお弁当要らない。』
『何言ってんのよぉ。お弁当はちゃんと…』
『私は男じゃない!!男みたいなお弁当いつまでも食べれないわよ!!何よ揚げ物ばっか!それで毎日恥ずかしくて食べれないんだから!あと私そんなに大食いじゃないわよ!!』
『ちょっと…お母さんだって忙しいんだから…』
『何が忙しいよ!友達のお母さんは仕事に出ててもきちんと作ってるわよ!自分のお弁当位自分で用意するから!』

この小さな意地が母を悲しませたのは間違い無いだろう。
が。
私にとっては大問題だ。
揚げ物や肉物が多くてニキビは出来るし。
量がそもそも多い。
そして女友達には笑われて。
中学は小遣いをやりくりしてコンビニのお弁当。
それを
おじいちゃん達に愚痴ってみれば、高校からはおじいちゃんの所に行けることになった。

勿論バイトも見つけて。

バイトって言うか…まぁ…押しかけてったって言うけど…

そしてその選択が、人生を左右させたのは間違いない。


「ありがとうございました。」

バイトは小さくても、雰囲気のいいイタリアンレストラン。
あんな事があって、料理はしたいと思った。
だから飲食。
でも焼き鳥屋なんてのは嫌だから。
そんな時。
高校の入試の時にたまたまおばあちゃんと入ったレストラン。
美味しくて、優しくて。
何よりホールとキッチンは両方するという事も気に入った。
作った人が運んでる。
隠れ家的なそこは小さなお城みたいだった。

だから頼み込んでバイトを入れてもらった。

オーナー兼シェフの店長は若いながらも本場イタリアで修行してきた腕のある人。
薪のオーブンやパスタ、などなど。
そしてスイーツも。
かっこよく見えた。

だから頼み込んだ。

店は日曜日は絶対休み。
かきいれどきだと思うが、日曜日はイタリアでの暮らしの名残りで教会に行くので休みだ。
その他木曜日。

病院とか行ける様に、だって。
おじいちゃん達にはキッチンに入れる様になったらご馳走してあげれる様に頑張ろう。
その為、春休みから入る事にした。

そんな感じで、やる事は多く。
高校入学から二ヶ月程度でキッチンに入って学ぶ事になった。

それまで見てたけど。

そして、初めてリゾットで、店長から美味いと言ってくれて。
リゾットは得意になるくらい作ったかも。
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