アイドル

□SolidS
1ページ/28ページ

私は、美形が苦手である。
特に「ハーフ」は。

「…」

私、霧澤水華はめでたく22になりました。
その日。
の朝。

「…えと、杉本…さん?」
「いやぁ、僕もお父さん、でいいよ?」
「いや、無理です。」

従姉の夫のお父さんに捕まりましたこの野郎。

「美容師になったのに大学生?」
「ええ、まぁ…叔父さんが出ておきなさいと…」
「大変だねぇ。…うちで働かない?」
「…脈絡を下さい…」
「あはっ。じゃあ今日から待ってるよ!透くんの弟子が来るなんて嬉しいなぁ!」

脈絡!!
杉本一族は皆こうなのか!?
杉本さんが去って。
大学に。
講義の合間。
に。

「って言う事があったんですが。」
『…スマン。お前がその学校に行ってるのを言ったのあたしだ…そうなるとは…』
「姉ちゃん…」

私は昔、事故で両親を亡くし、父の兄である叔父の元に引き取られた。
叔父さんはかなりいかつい顔(そう考えると父さん朗らかだった)だが良い人で。
まだ末っ子が高校生で大変だというのに私の為に大学の費用を捻出してくれた。
私といえば世話になっててものアレで叔母さんの長女、つ
まり姉ちゃんを頼りに手に職で美容師に。
…まぁ濃かった六年間だったわ…
見事に偏差値激高の大学に1発合格。
そして一人暮らし。
勿論美容師として働かない訳にはいかない。
食費かかってますんで。
で。
働いていた美容院が潰れ(借金まみれだったらしい)事情を姉ちゃんに泣く泣く説明し、とりあえず一ヶ月だけ仕送りして頂いた。
その間に面接を受けたがどこも不採用。
世知辛いと愚痴を零したらこうなった。

「…杉本さんの店…芸能人くるじゃん…」
『意外と会わないもんだぞ?まぁ腕は確かだ。腕は。』
「不安になる言い回しをしないでください…」
『ははは!』

仕方ないよね…

「はぁ…」
「うお!?」
「!?」
「って…なんだ霧澤ちゃん。そんな所で何してんの?」
「…とある事件を報告した…って奥井君今来たの?」
「そ!…そだ。霧澤ちゃんさ?」
「はい?」

そもそもなんで私はこの人に「霧澤ちゃん」で呼ばれてんだ?そりゃ一年生から結構同じ講義だけど…

「美山このみって知ってる?」
「ん?ああ。知ってるよ?それがなに?」
「…なんか…避けられ?いや…恐がられてる?」

「は?」
「この前レポートをさ、落としたから拾ったら…スゲー青くなられて逃げられた…」
「…チャラそうな男が物凄く苦手なんじゃない?あの子大人しい子だし。」
「さらりと酷い…ここ2週間逃げられてっからさ、良かったら渡してくれね?」
「ああ、良いよ。」

とりあえずそのレポートは受け取って。
美山このみ…あの黒髪のボブヘアーは良いね。
ま、仕事前に…

「…はぁー…」
「すーげー、ため息を人の顔見て吐かないで?」
「あぁ、いや、ごめん。今日からちょっとアレな人の元で働くからさ…」
「仕事?」
「ま、苦学生なもんで。じゃこれはやっとくよ。」
「ああ、悪いねー。(霧澤ちゃんよく見たらすーげー美人だよなぁ…)」

ん?
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ