アイドル

□里津花お相手
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『おーい、声ちっちゃくて聞こえねー』
『ちゃんとおっきい声で言ってよー』
『っ…』

昔から、度胸が無くて。
あがり症で。
怖いものばかりで。
でも。
そんな私でも褒めてくれる人はいた。

『俺、水華ちゃんの声綺麗で好きだよ。だから…俺と頑張ろ?』
『…うん…』

『うわぁ可愛い!これどうしたの?』
『あ、うん…作った…』
『っ!!すごーい!!可愛いー!』
『いや…りっくんのが可愛い…』
『ん?』

『おいおい里津花ー。お前それなんだよー。』
『え?』
『っ!』
『ああ、これ?可愛いでしょ。俺の宝物。』
『っ!!!』
『おいおい…そんなファンシーキーホルダーがかよ…』
『うん。』

『おーい里津花ー。』
『おはよー。』
『おはよ。』
『見たぞー?ん?そのマフラー…』
『ふふっ寒いねって言ったら編んでくれたんだぁ。』
『っ…!!!』

でも。
好きだなんて言えないから。
だから…
このままでいいんだ。

『…おい。』
『え?』
『あんた、今度入ったスタイリストの見習いだって?』
『え…あ、はい…えと…』
『…ああ、そんな固くな
らなくていいよ。俺も同じ時期に入ったから。』
『あ、アイドルさん、でしょう?』
『ああ。相談があるんだ。あんたの目は確かだから。』
『…』

たくさんの出会いに、とりあえず普通には話せる様になった。
それもこれも幼馴染みのお陰。
それが今の私。

「水華。」
「ああ、しーくん!」
「しーくんはやめろ。水華、ちょっと頼みたい事があるんだ。」
「?」
「新しく、ユニットプロデュースする事になった。」
「ほんと!?凄い凄い!久しぶりのアイドルしーくん!」
「だからしーくんはやめろ。で、だ。俺達の総合スタイリングをお前に任せたい。」
「ぬぁ!?」
「ぬぁ、じゃない。社長の了承も得てるんだ。」
「それってさ。普通取る前にきかない?」
「ん?お前ならやるだろ?」

しーくん!それはあんまりだよ!?
そして。
私は実に10年ぶりに幼馴染みと再会する事になる。
だけどそれをまだ知らず。
事務所で皆の視線を集めてるだけだった。
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