アイドル

□ツキプロほのぼの
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昔。
初恋の人がいた。
その人は治らない病気だったけど、入院する前はイジメに合っていたらしいけど。
でも、作曲が好きな人だった。
私は、服とか小物を作ることや、メイクが大好きで。
歌は…嫌いだった。
私の歌声は、今でいう所のテクノボイス。
普段はそうでもないのに、歌だけは、歌うとそうなった。
そんな私は私の声が嫌いだったし、それで良くからかわれた。
だから嫌いだった。

あの人が、いい声だねなんて言うまでは。

それから良く病院に行った。

初めて。
私は曲を作ることに触れた。
楽しかった。
彼は歳にしたら凄い歌詞を書いていた。
だけど曲が追いつかないんだ、なんて笑いながら。
ちょっとアレな曲も、可愛い曲も。
皆彼が教えてくれた。

出会って1週間。
たった1週間。

真冬の、年が終わる日。

彼はたくさんの楽曲データや色んな事を残して、この世を去った。


あれから10年。
私は高校生になった。

彼が残した物の殆どは、私に譲りたいと書いてあった事から全て私が引き継いで。
ついでに家出なんてしてみて。

行く宛も無いまま、私はとある人
に拾われた。

親が私のやる事許してくれなかったからね。

「…はい。」
「…ありがとうございます…」
「なんでまた…これは…ノートパソコン?」
「…私の大事なもの。」
「ほう。」
「服も、小物も、ヘアメイクも、メイクアップも、作曲も、歌う事も…全部駄目なんて…楽しくない家ですよね…」

唯一、彼が褒めてくれた歌声で。
私は一曲だけネットに公開した。
結構お気に入りの数が凄い。
それは、何年も経って彼が認められたという事。

全部独学だった。
彼もそうだったから。
でも。
親はその全てをやめろと言ってきた。
更に言えば見合いさせるとか。
嫌だし。
なんでうだつの上がらない底辺サラリーマンの娘が見合いになるのよ。
家でのプライドが高すぎるわ。

「…なら。それを仕事にしてみるかい?」
「え?」
「そうだなぁ。とりあえずこっちは…おいおい。まずはうちの子達を綺麗にしてみて。」

そう言えばこの人…誰。
変な人。
だけど物凄く安心出来る人。

「社長、お呼びですか?」
「うん。うちの…まずバイトからだね。」
「え?」
「?」
「新しいバイトの
力量を見たいんだ。適当なモデル達を捕まえて見て?」


それが私の始まりだった。
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