アイドル
□里津花
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「…」
私、霧澤水華。
外、大雨。
十二月の寒さの中の雨は痛い。
駅前の待ち合わせによく使われる広場の噴水の側のベンチ。
雨のせいで暗くなるのも早いこの状況で。
私はただぼーっと座っていた。
何にそんなにショックを受けたのだろう。
彼氏が約束をすっぽかしたから?
約束をすっぽかした彼氏が女の子と歩いていたから?
…あまり好きという感情が分からない。
付き合っているという「名目」でしか彼とは一緒にいなかった気がする。
だけど。
いざ浮気の現場を目の当たりにして。
結構ショックだった。
「…」
いつしか雪に変わった。
寒い、の前に本当に痛い。
そして。
止めと言わんばかりの事がスマホによってもたらされる。
『水華へ。すまんが、夜逃げする事になった。この携帯ももうじき止まる。学校へはなんとか支払いは済ませてあるから、ちゃんと行きなさい。』
なんという現実。
それきり家族からメールも来なくなった。
うん、どうしよう。
どうしようついでに頭も痛くなってきた。
っていうか夜逃げって…
「…」
つまり私はどこにも行く宛はない。
現実を知ってから、朧気になる視界。
私の意識は、誰か、男の人の足が近づいて来た所で、失った。