□最強神獣になっちゃいました。
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十年前

1人の少女がいました。
少女は現代において殆ど耳にする事はなくなっていた「置き去り」の子供でした。
少女は聡い子で、自分が捨てられた事を分かっていました。
森の入口で置き去りにされ、若干六歳にして世を愁い、そして森の中へと消えたのでした。

彼女を捨てたのは彼女の祖父でした。
母の行動を許せず、また、その行動の末に生まれた少女は祖父には「忌み子」だったのです。
実際少女には不思議な力がありました。
霊を見、言葉を交わし、そして触れる。
そして弱々しくあるものの、自然を操るその力は祖父の目には恐ろしいものとして映ったのです。
そして彼女の母が新たな伴侶を祖父が用意し、仲を深めているその時。
少女は祖父によって森に捨てられたのでした。
これからどうしようかと森の中を彷徨っていると、古びた社がありました。
そこは遠い昔、この辺りにあった村が総出で切り盛りをしていた稲荷神社。
村が無くなり、人の手が入らずかなり朽ち果てていました。
雨が降り始め、少女は社の中で雨宿りをする事にしました。
入った少女は驚きます。
そこには自分よりも大きな獣がいたからです。
その獣は驚いた
事に人語を話しました。

『其方は何者か。』

少女は答えました。

『何者でもない。家族に捨てられた、行く宛もない死を待つのみの…ただの変な子。』

子供であるというのに、大人の様な話方をする少女を獣はいたくおもしろがっていました。
少女は気づきます。
獣が大きな傷を付けている事を。
そしてそれから一週間。
奇妙な同居生活が始まりました。

獣は昔にこの稲荷神社に降りた狐だったのです。
長い長い時を生き、次第に獣は神獣と呼ばれる力を身につけ、そして自分の社を綺麗にしてくれる村人を助けていたのです。
しかし、ある日村は戦に巻き込まれ、全壊。
村人もその戦で死に絶えてしまったのです。
かろうじて戦をやり過ごしたこの社も、人の手が入らなければ朽ちるのみ。
だが獣はそこから動きませんでした。
この村が大好きだったからです。
しかし最近になって、力ある神獣である獣を狙う者が現れたのです。
そして大きな傷を負わされたのです。
少女はその力でその事を知りました。
少女は行く宛もないので、この獣を看病すると決めたのです。
そして一週間。
獣を狙う者が再び現れたのです。
少女は身を挺して獣を護りました。
幼いその体で必死で、今の居場所を奪わせまいと。
そして獣は願いました。
心を寄せたこの少女を護りたいと。
しかし傷ついた体は徐々に獣の命を削ります。
そんな中現れた四人の少年達。
その内の1人は妖怪であるものの、獣と同じ狐の力を持っていました。
獣は自分を護り、自分よりも早くに命の危機に瀕する少女を助けたかった。
獣は自分達を護って戦ってくれる少年達に頼み事をしました。

少女を護ってやってくれ、と。

そして少女が目覚めた時、獣はもうこの世のどこにもいませんでした。
少女は誰に言われるまでもなく、知ります。
獣がその命と引き換えに自分を助けてくれた事を。
そして。
その事が、少女を人間という種族からかけ離れたものにした事を。
少女は、獣の命と力を得て、生きながらの「神」となったのです。

行く宛ない彼女はその少年達の知り合いだというお婆さんの家で暮らす事になりました。
そこで彼女は学びます。
妖怪も、人を傷つける者と仲良くする者とがいると。
そして。
彼女は託された命と力を護って生きる為、強くなる事を決めたのです。



れから暫くして少女はまた別の事件に巻き込まれます。
混在する数多の世界の一つからやって来た犯罪者。
それに捕まった彼女は、非人道的な研究とやらに無理やり被検体にされたのです。

しかし、彼女の想いが、彼女を生かします。
新たな力を得て、力が益々強まったばかりか、人の体から「神体」と呼ばれる身体へと変化する事が出来るようになったのです。
強くなるだけでなく、そして人としてだけでなく、彼女は神としての勉強もしなければなりませんでした。
しかし。
生きる意味を見つけた少女は、もう、獣と出会った頃の世を愁える少女ではありません。

そしてこれはそんな少女だった私の物語。

名前は霧澤水華。

生き神、神獣、天狐、九尾…等々様々な呼び方をされますが。

至って私は普通の女子高生です!
…明日から。
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