多重能力

□一
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とある部屋。
そこで眠りにつく男女。
だが、その部屋は異質であった。
窓はなく、ドアには電子ロック。
明かりはない。
そして、眠りにつく男女。

二人は植物が絡んだ中心にいた。
二人が入っているのは液体。
だが、何かの容器に入っているのではなく、植物の絡んだ隙間に液体が入っている。
不思議なのは液体が落ちない事。
そして時折ボコンと気泡に合わせてその水面が揺らぐ。

と、男の入った植物がスルスルと開く。
そして男はまるで産み落とされるかのように下へと落下した。

「…ぅ…」

すぐに意識を取り戻す男。
と、その瞬間明かりがパッと付き辺りが良く見えるように。

『お目覚めかね、鳥海浩輔君。』
「あ…んた、は?」
『…私が誰かは後で判るさ。さて、辺りを見回して見るといい。』

まだ霞む目で男…鳥海浩輔は言われるまま辺りを見る。

『そこは君達の為に用意した部屋だ。君達は今からそこで暮らす。…あぁ、彼女も目が覚めたな。』

と、先程の浩輔と同じように女が落ちてくる。
その姿は女性と言うより少女とも言っていい。
だが見覚えのある顔に浩輔の思考は徐々にクリアになっていく。
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