□転生令嬢
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「うーむ…」

私レティシア。
冒険者してる14歳である。
登録してから四年。
此度初めての事で悩んでいる。

「…と、言う事なんだけど。」
「舐めくさりやがって…」

討伐はいい感じ。
ゲームシステムなステータスのお陰で四年でBランク(上から三番目のランクね)になれた。
そしてこの度思い切って生産職系に手を伸ばした。
日常でも必要な料理。
食堂の依頼、肉の補充と給仕と調理補助だ。
職業設定もあり、取得出来れば設定出来る。
現在料理人なのだが…
依頼をこなしているが日払いというのにここ数日払われていない。
あと…

「どう説明したか知らないけど、他の給仕や下働きに冒険者だと知られていない気がする。今日なんて休みなのに肉の補充してこいって下働きに命令されたんだけど。」
「舐めくさりやがってぇぇぇ!!」

現在、騎士や兵士の他に冒険者という職業は花形である。
冒険者というだけで優遇される面がある。
そういう法律や制度があるからね。
なんせ魔物がいる世界、戦う人間は貴重なのだ。
幾ら冒険者溢れてると言ってもね。
しかもBランクの魔物だよ?

「よぉし、レティシア!別の食堂に行け!…いや、ギルド食堂頼むわ。」

冒険者ギルドは協会から認定された支部が沢山ある。
ここもその一つで、宿屋と食堂、酒場が併設されている。
冒険者は旅をするものだからね。
旅をしながら料理人修行出来るようになってるんだ。

「これからAランクのバトルコッコ狩りに行くけど行く?」
「行く行く!じゃあ処遇は任せたよギルマス。」
「おう!!任せとけ!冒険者達を…依頼の信用問題だ!!」

うちのギルマス、スキンヘッドで強面だけどそういうの細かいからね。

「難儀なトコに当たったな?」
「全くだよ。ま、制裁下れば、だね。…北区のアマル亭は行かない方が良いね。」
「だな。」

歩いていたら、大通りが騒がしい。
いつも以上じゃない?

「なんだなんだ?」
「どうした?」
「ああ!それが珍しい組み合わせが見れてな!」

人だかりの向こう。
そこには男性が二人。
一人は馬に乗ってて一人は…

「うぉ!?あれ騎士団長じゃね?」
「それと一緒にいるの…って、あれは…」
「っ!」

帰ってきたんだ!

「ちょっとごめんなさい!通して!」
「あっおい!?」
「レティシア!」

声が聞こえたのか振り返る。
銀髪の、セミロングの緩いウェーブを一つに束ねた…

「お父様!!」
「レティ。」
「は?」
「「「「はぁーーー!?」」」」
「これでお母様の雷確定だね。」
「うっ…」

大層美人過ぎる美丈夫。
四年前冒険者登録時点で冒険者の最高峰Sランクの、この国を代表する有名冒険者。
ミハイル・セレンティス。
実父である。

「…似てる…」
「当たり前でしょ。血の繋がった親子だもの。」
「どこか行くのか?」
「うん。しばらく料理人修行したかったんだけど依頼受けた先がとんでもない所でさー。仕方ないからギルド食堂ですることにしたんだけど、今からバトルコッコ狩りに行くの。北の方に出たって…」
「む…すまん。帰りがけに襲われたので討伐してしまった。」

なんですって!?

「「「俺らの経験値が…」」」
「なら依頼はミハイルさんが完了するからまたギルド戻らねぇとな。」
「そうね。」

無駄足になってしまったわ。
まぁ良いけど。
今世の出自はわりとめんどくさいものだ。
そもそも産まれたのは母の子としてなのだが、父親は違った。
ラスティーヌ公爵家の双子の兄に嫁いだ母は私を産んだ。
しかし、父親は母と同時に侍女と付き合っており、産まれたその日に侍女が私を捨てたそうだ。
勿論その動きは当主たる祖父や祖母、そして双子の弟は知っており。
捨てられたその直後に母も私も弟の方へと寄ったのだ。
ちなみにこの世界、養子になると親の血を入れ替える事が出来る仕組みがある。
私の父親の血はお父様へと変えられ、双子の兄は没落をさせる為(簡単に勘当とか出来ないから)元々傾きつつあったそもそもの爵位を継承させ、離縁とした。
お祖父様はお父様とお母様を次期当主とその夫人とし、産まれた私も弟…つまりお父様の実の子として扱った。
しれっと「何か行き違いがあったようですな?嫁は弟に嫁いできたが…」って言うからね。
真実を知ってるのは我が家とそしてお母様の生まれた家とその家を支える家。
ちなみにお祖父様傾く原因の先代当主の借金を全部息子に押し付けてからはとても元気。
新しく残った爵位で領地を賜って、それからずっと領地にいる。
とても発展してるよ。
そして四歳の頃に弟が生まれた。
10歳で冒険者登録出来るから、高らかに冒険者になるって宣言したら「おお、それは良いな!辺境だから戦えないと困る」とお祖父様は一族の掟として10歳までにマナーなどの教養と基礎訓練を、10歳から冒険者登録し世間を知る為の修行とした。
今ではお祖父様もお祖母様も、お母様も冒険者だ。
で、お父様はあっさりSランクになったし、当主教育はお祖父様なのでわりと色んな所に行ってる。
と、言うわけなのだ。

「そろそろカリスの登録式だ。帰ってこんとな…」
「お母様だけじゃなくてお祖母様も雷落とすね。」
「…、帰る手筈を整えてくるから一旦依頼等は終わらせてきなさい。」
「はい。」

ちなみに。
双子の兄である元父親は浮気性で有名だが、お父様はむしろ女嫌い。
家族にだけ優しい、というのが社交界の常識である。

今日帰るなら…ドレスか…
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