□転生令嬢
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「…嘘でしょ…」

わたくしレティシア。
この魔力ある世界の、とある国の貴族として転生した。
我が国は10歳になったらステータスを見る風習がある。
より資質が良い子を跡継ぎにする為だ。
だから嫡子というのは長男では無い。
で、わたくし10歳になりました。
ええ、ステータスチェックしました。
ただ、うちは伯爵家。
そんな大それた家ではないものの、兄と姉達がわりといいステータスだった事から色々期待されていた節がある。
が、特に何も表記されていなかった。
いや、一点だけある。
ステータスをチェックする魔術師さんが驚いていた、属性。
空だ。
慌てて出ていった隙に、わたくしは父親に勘当を言い渡され無理やり馬車に乗せられ、ここに来た。

「…あの様子じゃお父様が無知なだけかもね…」

あの時の魔術師達の様子からそう思う。
しかも一番物知りで優しい長男が今日はいなかった。
他の兄姉達は良くわたくしをいじめに来る。
一番上のお兄様だけが庇ってくれていた。
ああ、あとお母様も。
お兄様はお母様似だ。
お母様は銀髪に青眼という超美人である。
お父様…いや、クソ親父が何故お母様と結婚出来たかなんて政略結婚に他ならないだろう。
ちなみに私もお母様似である。
兄弟姉妹の中でお兄様とわたくしだけがお母様似である。

で。

「まさかここ…おじい様が放棄なさった何もない領地?」

うちは領地を持っている。
わりと広大な土地を三つ。
だが、その一つは何故か手付かずなのだ。
見て分かった。
ここでは作物が育たなかったのだ。
木々すらない。
こんな所では生活出来ない。
まさに荒涼地帯。

「ふむ…さしずめ何も有益なものを発現させなかった子供への仕打ちとしては、ありがちよね。」
「お嬢様…こんな仕打ちをなさるなんて…」
「大丈夫よ。…お母様とお兄様にも大丈夫だって言っといて?」
「そんな…」
「…」

他の兄姉達は自慢げに魔術師として習った事を垂れ流してくれていた。
土地には魔力が流れる筋がある。
昔の龍脈みたいなもの。
多分それが滞ってるんだろう。

馭者を見送って。

「ま、ここを任されたと思ってやって行きましょ。ラノベ展開来たわね…」

何かのため、とお兄様を説得して暴漢対策として近接、弓、ある程度の初級魔術(ああこれは他の兄姉達が自慢げにしてやってたのを覚えただけだったわ)出来るし。

「空属性…空…そらじゃないわね。くう属性だって言ってたし…くう…空間?…まさか!」

空間に作用するなら。
属性をそのまま使う事を魔法という。
魔法はイメージ通りに魔力が作用する。
要はイメージ。
で、空間に作用。

「ここ、と、あそこ。点と点を…」

そう、瞬間移動だ。
空間というなら超越すら可能のはず。
難しいけど魔術があるし。
点から点に動く。
普段は動線で動くけれど、別次元を通るならよね。

「…っ!…とりあえず、成功したね。本当に一瞬だ…」

目印に付けていた地面のバツ印から離れた所に。
うん、これなら大丈夫そうだ。

「そういえば検査官が始まる前に言ってたっけ。」

始まる前、お父様とは別の部屋に入り説明を受けた。
その時に、スキル持ちは確かに喜ばれるが、寧ろ属性持ちの方が喜ばれると言っていた。
実際属性は空属性だけでなく他のものもあった。
正直スキルは多分自分で高度行動するとなんでも取れる。
イメージだけで魔術に近い事も出来てしまう。
とりあえず、基本をおさらいしつつ今後の事でも考えよう。
なんせ…魔物すらいなさそうだし。

「んー…ラノベ展開来たならラノベ展開を目指してみるか。土属性で重力操ってってやつあったな。試してみよう。」

やってみた。
うむ、出来た。
空に上がってマナの流れを見る。
やっぱり領地の端っこ辺りで所々せき止められていて領地の中心地にマナが流れていない。

「…せき止められてる原因を取り除けばマナ巡るよね。やってみるか!」

と、その前に。

「魔力とかなんでも糸っぽくなるのスキルのお陰だったんだねぇー。」

着ていたドレスをまず魔力変換する。
その魔力を糸にし、編む。

「やった!織り手スキルゲットー。本当に資質検査の後からステータス見れるんだねぇ…よし!可愛い冒険者服初級完成!」

サイズもバッチリだ!
そして動いても問題無いぜ。
悪いわねお父様。
わたくし、人一倍サバイバルには慣れているのよ。

「…近い滞りはこっちだね。ええと…アークライト領方面のだね。」

VRRPGをやりまくってきたんだから、これくらいやってやるわ!
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