□転生令嬢
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転生した。
そう、異世界転生物の、アレだ。
しがない伯爵家に生まれたが、前世と同じく結婚には興味なく。
なんせ成人は15歳だからね。
それまでも冒険者になったり、色んな事をやって来た。
貴族なんで結婚しとかないといけない。
お父様に「お父様が選んだ人で良い」と言ったところ母と姉から物凄い説教がやってきた。
そして、父が選んだ…というか見つけてきた結婚相手は何故か公爵。
うら若き当主を継いだばかりの、だ。
既に夫人…正妻がいるので第二夫人だ。
側妻という所に再びお母様達の逆鱗に触れお父様も大説教だったが…まぁ、そこは良い。
なんせ側妻なら面倒な社交から遠ざかれるもの。
趣味とかやってても良いらしく、その話しはお受けしておいた。
20歳となり、迎えた婚姻式。
側妻なのでめちゃくちゃ質素(と言っても前世の結婚式位はある。こっちの本式がかなり豪華なだけ)で行われ、そして第二邸…すなわち離れへと入った。
抱える使用人も優しい人たちばかり。
まぁ第二邸といえど管理はわたくしだから午前中にさっさと終わらせて、午後からは趣味に走った。
料理だってするわ。

初夜に関しては…かなり驚いたけど…なんせ凄い絶倫具合だったから!!
生まれて初めて寝坊したわ…
愛撫もそこそこだったのはちょっと幻滅ではあるが…まぁそこは良いわ。
初夜以外あまり旦那様来ないしね。
のんびりのほほんと、たまに遠出なんかしたりして充実した毎日を送っていた。

半年程経ったある日。
執事に用があったのだけど本邸に報告に行ったきり帰って来ない。
仕方なく探しに行くと…

「…どういう事かしら。」
「「「そ、それは…その…」」」

なんと本妻との間に出来た二人の息子がよもや使用人に虐げられていた。
確か先日三人目が生まれたはずだ。
2歳と1歳の子供。
見た目から旦那様との子供と分かる筈だが…

「奥様?」
「ローウェン、これはどういう事かしら?」
「え?…っ!お前達、まさか…」
「「「っ!!お、お許しください!!」」」

聞けば、この虐待は本妻が命じたもの。
皆主人の子供だからと反発したが、最初に有能な使用人が無理やり暴行を加えられた上で辞めさせられてから、逆らえなかったという。
まぁそれが出来てしまうのも貴族だわね。

「名前は…」
「上の坊っちゃまはエルナード様、下の坊っちゃまはアルファード様でございます。」
「なるほど。ならば、ローウェン。秘密裏にこの子達の部屋を整えなさい。しっかりとしたものをね。」
「っ!はっ。」
「エルナード、アルファード。初めまして。第二夫人のレティシアよ。」
「あ…う…」

言葉が遅い。
それに栄養状態も良くないわね。
と、窓の向こうに本妻が見えた。
優しい顔で赤ん坊を抱いている。
それを見、目を見開いた。
本妻の茶髪ではなく、また旦那様の金髪でもない。
髪色は遺伝する。
魔力の質と関係しているから、髪色や瞳の色は遺伝しやすいのだ。
この子達は旦那様の少し薄い金髪に緑の瞳を受け継いでいる。
少し天パな所も。
なのに、あの赤ん坊は赤毛だ。
この家にも彼女の生家にも無い色。

「…不義を行っていたということ。仮にも公爵家の夫人が。」
「「「「っ!!!」」」」
「…、はぁ。のんびりと趣味が出来ると喜んだけど…そうもいかないみたいね。…屋敷の整備もままならないみたいね?」
「そ、それは…」
「お、奥様は…エリシエナ様は執務室に入られた事は…一度も…」
「…なんてこと…それを旦那様は?ご存知なの?」
「…恐らくお知りにならないのかと。それでマーサがいつも具合が悪そうにしていたのか?」
「…マーサ侍女長が…やっています…」
「後でわたくしの執務室にマーサを呼んで。」
「はい。」
「それと…そうね。まずは、厨房からね!」
「「「え?」」」
「あなた達もおいでなさい。」
「はっはい!」
「お、お待ちをレティシア様!また厨房に入られるなどっ奥様!!」

さぁー何を作ってあげようかしらね!
二人とも抱いたけど軽いわねぇ…
どちらとも歯は生えている。
エルナードは普通の食事だけど、アルファードは前歯だけだから離乳食…普通の固形と柔らかいものがいるわね。

「サンジェルマン!」
「おお、奥様!先程……ふぁ!?坊っちゃま方!?」
「あら、良い色艶の野菜ね!あなた達は何が好みかしらねぇ?さっ準備して作るわよ!」
「っ!はい、ただいま。」

サンジェルマン、中々有能な料理長よ。
理由は言わなくてもこうして子供達に必要な物を作るくらいにはね。

この第二邸は本邸とは少し離れている上、森の中と言った様相だ。
本当に離れとして使っていたようね。
敷地も公爵家だからやたら広いわよ。

「この様子を見るに…まさか領地にも帰られていないのでは?」
「ええ。仕事が立て込んでいると仰られていますが…婚姻を結ばれてから一度も…」
「書類だけでは領地の仕事など無理があるわ…」

恐らく散財が酷いのだろう。
城の役人は基本的には王都永住の貴族がやる。
領地持ちは大半を領地の運営に充てるからだ。
公爵家の領地も4つある。
どこも大きいけれど…
まだ当主を継いで五年…慣れないところに婚姻、更に浪費とくれば…まぁ疎かな部分も出てくるか。
となれば…わたくしの婚姻もそこに付け込まれた可能性はあるわね。
ああ見えてお父様、宰相府の宰相補佐だから抜け目ないし。
小悪党な顔だけどね。
ふむ…まぁまずはこの子達をしっかり健康にしましょうか。

「っ!!」
「よく噛んで食べなさい。」
「…」

本来ならもっと話したりするはずなのに…
今はまだ教育というよりは家族の温もりを教えてあげないとね。

「こうして、勇者は……あら、眠ってしまったわね。」
「はい。ご幼少の頃の旦那様にそっくりで。」
「坊っちゃま方を虐げたなんてっ…許せません!!」
「…やりようは幾らでもあるわ。」
「え?」
「ラニア、このままこの子達を見てあげて。…あなた達もよ。」
「っ、はい!」
「これで坊っちゃま達に意地悪しなくて良いんですね…」
「エリシアナ様からも離れられる…」
「…」

大人しい見た目のくせにやる事激しいわね。
確か彼女も伯爵家の出よね。

「はい。アルブラン伯爵家です。」
「ああ、あの身の程知らずの…なるほど。姉妹揃って無能で約立たずなのね。仕方ないわ。お父様に連絡しましょ。」
「アバンスティール伯爵に、ですか?」
「ええ。まずは…この子達の親権を…母親の方をわたくしに変えて頂くのよ。書類が沢山あるからね。」
「かしこまりました。」

さて。
たまには本気出しておかないと、ね。
ああ、そうだ。

「それと。クロフォード公爵家にもお手紙を持っていって欲しいの。」
「クロフォード公爵家…というと…宰相閣下の?」
「ええ。結婚したらご報告申し上げると言っていたのをすっっかり忘れてたから。ああ、その原因のアレも一緒にね。お祝い返しと言えば分かってくださるわ。」
「は、はい…」

そういえば…

「それと。家令のロータスを呼びなさい。ここまで酷くなっていないのはマーサと彼のお陰でしょう。」
「はい、そうですね。」

さて。
仕方ないけど、頑張って動きましょうか。
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