□現代ファンタジー
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魔女。
古来より魔術を扱う特異者。
血筋での受け継ぎも勿論だが、そうでなくても産まれる場合がある。
私もそう。
現代においては特に隠して生きなくてはいけない。

「…」

両親は早く死んだ。
母親が魔女だ。
父親は違う。
なのにどうしてか父方の親戚は知っていた。
そして葬儀以来私は一人で生きてきた。
まぁ元々引き取られる事は無いだろうと準備されていたから大丈夫なのだが…
そんな付き合いのない親戚から来るよう手紙が来た。
今更?
とにかく行ってみよう。

電車を乗り継ぎ、やって来た都心。

「…久しぶりだな…」

父方の祖父母はわりと大きな家を持っていた。
死んだ後後見人と来た以来。
チャイムを鳴らす。

『はい。』
「水華です。到着しました。」
『あぁ…入ってちょうだい…』

随分声に覇気が無くなっているな。
昔は…

「失礼します。」

開けると、これまた久しぶりの祖父。

「…来たか。」
「はい。お久しぶりです。」
「上がれ。」

良くも悪くも、祖父母は昭和の人間だ。
まぁ昔よりも覇気が無いように感じるが…
その時気付いた、あの頃は無かった様々な靴。

「…ご来客ですか?」
「いや……」

凄い、渋面。

「…少し事情があってな…お前の父親…聡文にとっては従姉妹となる子一家を住まわせている。」
「…はぁ…」

何をどうしたら親戚を住まわせる事になるんだろう?
しかも靴の数を見るに…多分結構子沢山っぽいな…
昔も来た応接間に入ると…

「こら!!今日はお客さんが来るから遥輝と啓太以外は入るんじゃないと言ったろう!!」
「「やべっ大おじさん来た!!」」
「…」

いま、身を寄せ合うこの子供達を殴ってなかった?

「…」

と、傷が消えた。
ああ、なるほどそういう事。

「…魔女や魔法使いってのは…血筋じゃなくても産まれるもんかね…」
「産まれますね。」
「「っ…」」
「ただ、この子達は血筋の子達です。」
「何?」
「…恐らく父方の方がその流れなのでしょう。多分受け継ぐのをやめるくらい魔力が弱くなったのかと。…うん、大丈夫ね。」
「あ…」

中学生と、小学生か。

「私を呼んだのはこの子達の事で?」
「ああ…二人ともこっちに座りなさい。」

すごすごと従う所を見ると、寧ろお祖父さんの方を信用してる?

「まず…彼等を引き取らざるを得なかったのは…家が燃えてしまい、新居探しの間という条件で間借りを許した。…一向に出て行かんので弟とは話し合いをしている最中で…まぁそこは良い。だが、暮らす内にこの子達だけ何故か暴力を受けていてな。窘めたら…」
「…親の方が笑って気持ち悪いとか化け物だから良いと言った、ですね。…昔私が言われたように。」
「っ…ああ…それを知ってから彼等を離れに、この子達はこの本邸に居させているんだが……」
「先程のように親すら勝手に上がってくる、という訳ですか…」
「ああ…弟の子供と孫だ。あまり強くも言えなくてな。…ずっとお前に連絡を取ろうとして…やめた。」

え?

「…私達も、同じように幼いお前を傷付けた…なのに親戚の子供を助ける為にと呼ぶとはなんと恥知らずかと…お前は聡文の娘なのに、な…」
「?」
「…聡文は、なんとも間抜けな父親だったようだな…」

は?
あー、まぁ確かにお父さん結構抜けてるけど…

「あの後、な…繭子さんが遺したビデオカメラが出てきてな…見させてもらった…全部、お前と聡文の様子だけだった…」
「…お父さん機械もの苦手だから…」
「ああ…昔からだったな…」

心境の変化もあったのか。

「水華、追い出した私達が言うのも筋違いなのだが…この子達の事をどうにか出来ないか…」
「…分かりました。」
「っ、嘘、だ!」
「遥輝?」
「大人はいつだってそうだ!嘘ついて、俺らを利用する事しか考えてないんだ!!」
「っ…」

つまりそういう事もさせられていた訳ね。

「嘘ついて、利用する?」
「そうだ!あんただってそうだろ!!」
「…する必要が無いわね。」
「そんな事ない!こんなっこんなっ」

ボっと火が灯る。
ああ、火の属性が強い子なのね。
だから、火事。

「本当にする必要が無いわね。この程度なら私もっと強いもの。」
「え…」
「兄ちゃんの…火が消えた…?」
「まぁ魔法は練習しなきゃ強くならないけど。私大抵一人で出来るし。」
「っ…」
「そうね。まぁでも…あんた達はどっちかと言うと、魔法界に身を置いてる方が安全だわね。…貝那智さん。」
『おや?水華さん?…それに…』
「「っ!?」」
「お久しぶりですな。」
『霧澤さん…どうかしたのですか?』
「魔法使い二名、親戚にいたわ。保護…いや、私の養子にする。」
『は?…おや、随分高い魔力ですね。』
「分かるのですか?」
『まぁ私は魔法界と人間界を行き来する人間界で動く弁護士ですから。幼い魔法使い・魔女を保護し適切な処理をするのも役目なのです。それはそうと水華さん。またあなたやり過ぎましたね?』
「うっ…いや、それは…」
『まぁそこは良いでしょう。…霧澤さん。こういう場合において必要な説明があります。お伺いしても宜しいですか?』
「…はい。」
『…では。』

貝那智さん最後笑った?

「改めて、霧澤水華よ。」
「…」
「僕、啓太。唐羅木啓太です。」
「…遥輝…です…」
「遥輝に啓太ね。」
「魔法界とはどんな所だ?」
「ん?んー…全く人間界とは違うかな。ええとまず必要なのは練習用の杖に箒か絨毯に…」
「は?箒?まさかそれに乗って飛ぶとか言わないよね…」
「勿論そうよ?箒か絨毯を一人で乗りこなせたら…」

障子を開ける。
と、空中から車。

「「は。」」
「ふわー!空飛ぶ車!!」
「あれ、使える。その前に箒と絨毯で乗り慣れて試験受けなきゃいけないの。人間界で言うところの自転車の様なものだから。」
「ええええ…」
「そ、そうか…」

この後は親も交えての面談だ。
この場合、親の対応で色々変わる。
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