□転生令嬢
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転生し、魔力がある事にこれ程喜んだことはない。
二歳の時。
妹が産まれ、更に頑張る事を決めた。

そして6歳。
そう、今。

「これからどうする?」
「そうね。とりあえず…家を出るわよ!!」
「うん!」

母が死に、父親が連れてきた継母と義妹はわたくし達を虐げた。
そもそも前世持ちの姉妹である。
自立心は旺盛だ。
妹はどうやら剣を扱えるようだ。

「どうあってもわたくしは魔術が使えないみたいね…」
「うーん…魔力鍛錬もしてるし…魔術は軽くでも誰でも使えるって書いてたのにな…」
「まぁ良いけど?冒険好きだし!」
「それはわたくしもね!」

こうしてわたくし達は意気揚々と家出…

「「…」」

出来たら良かった。
屋敷の囲い…つまり塀を魔法を駆使して乗り越えた先に居たのは、なんと何故か国王陛下と王妃様だった。
人が居たことにびっくりして落ちてしまった。
まぁわたくし魔術適正なので大丈夫。
更に同じように落ちてきた妹を魔法で受け止めつつ、地面に降り立ったら。

「ほう、中々良い素質ではないか。」

と、王様に見初められてしまい。
何故か王宮に拉致られた。
ボロボロでもドレス姿のわたくし達。
資質が高いとの事でこのまま家出も惜しいとされた。
大人達の言う通りに指示された課題をやったら。
沢山の大人の後見とやらを貰えた。
だがこのままでは無能の父親に食い潰される。
そのため、様々な候補地から厳選された土地で保護という形で育てられる事になった。
言い渡された所は年中雪と氷に覆われた辺境、北のブレグラント領。
王妃様の出身であり、弟が治めているそう。
到着して目を疑ったわ。
マジで常に吹雪。
ここは辺境公爵領。
迎えてくれた公爵は何とも若く、そして表情の変わらない人だった。
氷の辺境公とはよく言ったものだ。
心を開くのは唯一の姉である王妃様だけ。
ただ、会ったその日からわりと優しいけどね。

「公爵様、優しいね。」
「うん。優しいね。」

首都ブレスランと公爵邸は特殊結界魔術で中は常に春のよう。
花も咲き乱れるし穏やかだ。
だが、遠くに見える景色は雪なのだ。
こうして暖かい場所にこれたわたくし達。
沢山の習い事と戦う術を身につけた。

そして迎えた10歳の日。
これまで大人達も色々苦心してくれたのだろう。
わたくし達に一つの新たな道が示された。
クロノワール公爵の養子にならないか、というものだ。
これには王妃様や国王陛下だけでなく、様々な要職の重鎮達も頷く結果だった。
そもそも公爵は結婚する気がない。
これではクロノワール公爵領の跡継ぎがいない。
そこに現れたおかしい魔力値の子供二人。
しかも虐げられているときた。
大人達はこれに乗じたのだ。
わたくし達を公爵の娘にしてしまおうという。

「え。じゃあ冒険者なれないの?」
「えー!?」
「ふっ…安心しろ。そもそも俺も早々死ぬつもりは無い。まだ25歳なんでな?」

そう、あれから四年。
6歳だったわたくしは10歳に。
公爵は迎えてくれた時は21歳だった。

「養子というが、形だけではない。お前達に流れる阿呆の血を俺の血に変える。」
「「…」」
「ど、どうだ?」
「「…うん!」」
「そうか…」

仏頂面の公爵もわたくし達の前では柔らかい表情になる。
使用人達も優しい人たちばかりだ。

「…でも社交にはたまに行かないと王妃様に殴られるよ?」
「ねー。」
「うっ…」

そう、いつの間にかわたくし達は親子以上に絆を深めていたのだ。
自分でも中々…

そして、四年ぶりに王都に戻り、城で儀式をする。
公爵の血をわたくし達に入れ込むのだ。
これにより公爵の跡継ぎはわたくしと妹になる。

「母親であるアルフィーリアの血は残せ。絶対だ。…かの夫人は、そもヴォエルウォーグ帝国の皇女だった。珍しく国を越えた恋愛美談…もここまでよ。実情を探らせればあの伯爵が皇女殿下に無体を働いた故にの婚姻であった。その血筋を持つ二人を失ってはならん。お前達は帝国との橋渡しである。…皇帝に娘達の事を伝えた。伯爵にはそれ相応の罰と、そして帝国の皇族の血筋を護られる事を望まれた。無論、我が国としてもそれには賛成だ。」

なるほど…それでわたくし達保護されたのね。
まぁ資質がおかしすぎるもんね。

血の授結と呼ばれるこの儀式は魔術儀式だ。
わたくし達の戸籍から何から何まで秘密裏に公爵の娘になるよう色々されていた。
公爵も一年目位でその気で動いていてくれたらしい。
こうしてわたくし達は新しい父親の元に行く事になった。
とはいえ公女としての事もやらなきゃだけど、冒険者になる事は反対されていない。
そもそも辺境公爵領は魔物が強いから戦えないと困るからだ。
だから「お父様」も領地からあまり出ない。
まぁ時々王都に行けるくらいには余裕はあるそうだけど。

「お姉様の髪綺麗な白銀!!」
「リディアも綺麗な白金ね。」
「どちらも魔力が高いな…よもや宝石眼になっているとは…」
「「っ!!」」

元々茶髪に青い瞳のわたくしと、茶髪に緑色の瞳の妹。
お互いがキラキラしたジュエル・アイ…宝石眼へ変化した。

「ほほほっ我がクロノワール公爵家そのものね!」
「そうだな。」

そういえばそうだね。
王妃様は白金にルビーのジュエル・アイだし、お父様は銀髪にわたくしより濃い蒼のジュエル・アイだ。

「改めて、宜しくな。レティシア、リディア。」
「はい、お父様。」
「うん!お父様!!」
「ああ。」
「あらあら。欲を言えば結婚して欲しかったけれどね。」
「いらん。」

元々、使い切れない程のドレスや飾り、様々な物を与えてくれたお父様だけど。
血の授結後更に酷くなった。
帰りに冒険者登録した。
10歳なら出来るしね。
とはいえ公爵家の人間になったのだ。
そもそもの頑張りの成果で飛び級はした。
これにより、冒険者登録時の検査でステータス通りのランクになるというのも当たり前になったそうだが、それは預かり知るところでは無い。
リディアも10歳になったらやる約束だ。
そうしたら、二人でパーティー組んで旅をする。
二年後が待ち遠しい。
それまでは令嬢教育に勤しむ事にする。
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