□転生令嬢
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「っ、あーーーーーっ…自由って素晴らしいわね。」

わたくしレティシア。
レティシア・クロノワール。
家名がある事で分かるが貴族である。
この世界、この国はまだ王政。
故に平民は家名を持たない。
そんな貴族令嬢のわたくしが今いるのは屋敷でもなんでもない、王都を出てすぐの平原。
元々こっそり冒険者になっていて、現在ソロでBランクのわたくし。
つい先日、お馬鹿な元婚約者との縁を断ち切る為策に策を重ねてまさに乙女ゲーのストーリーを作った。

「ふっ…馬鹿な人達。わたくしを追放して痛い目見るのはあなた達だと言うのに、ね。ま、関係ないからさっさと旅にでーましょ。」

ちなみにわたくしを追放したのは「許可が出せる貴族の当主、夫人」が全く居ない状態での夜会での出来事。
考えてみなさいよ、普通成人したばかりの子供がそんなの出来ないから。
幾ら王族でもね。
元婚約者というのは王族に近い血筋の公爵家。
うちは伯爵家。
下位の家格だから何されても許されるという馬鹿な考えを、大人が戻ってくれば矯正されるだろう。

それと馬鹿な継母もね。
お父様が戻って来られるまで、それまではのんびり気ままに旅をしましょう。
継母、気付いていないけどお父様はあれでわたくしを溺愛している。
継母は愛しているから結婚したのではない。
単に屋敷を回すために選ばれたに過ぎない。
身の程知らずの継母と義妹には天罰が下るでしょう。

グズグズしてる暇は無いわ。
呼び戻される可能性があるのだからさっさと出ないとね。
今世、レティシア・クロノワールは遂に冒険者としての一歩を踏み出す。
日本の前世があるんだ。
ある程度はなんだって出来るさ!

とりあえず王都から早く離れる為、転移魔術を使う。

「…、相変わらずここは賑やかね。」

転移したのは王都近くの交通の要所、クルセルス。
王都の周りにはいくつか大きな街があり、各地を繋ぐ街道の始点にもなっている。
大国なもんで王都もでかい。
国自体も大きいしね。
交通の要所には沢山の物が溢れている。
要所と呼ばれる街、それと領主館のある首都、王都が大きな街ね。
他にも小さな街も村もある。
まぁ村のほとんどは農作物なんかを育てる荘園のようなものだけど。

クルセルスは南方面に行く為の街道の要所。
東西南北に四つ、更にその間に四つ、計八個の要所を王都の近辺は置いてある。
まぁ外国からの使者等の休憩にもなってるわね。
何故ここまで大きいかというと、うちの国世界でも珍しい他種族国家だから。
魔王侵攻時代…旧時代にはもっと小さな国だった。
壊滅しそうになったのは度重なる魔王軍の侵攻に加え奴隷蜂起及び民衆決起があったからだ。
奴隷といえど、民衆は差別をするのは良しとしなかったのだ。
まぁその時の平民も奴隷に似た扱いだったらしいからね。
そしてそれを纏めあげ民を導いたのが今の王家の祖先レイナード。
当時の王の隠し子で平民として暮らしていたそうだ。
そして同じような境遇や貴族にも不遇されている人を纏めて奴隷解放及び民衆決起に繋げ、国を改革した。
つまり今のわたくし達は英雄達の子孫でもある。
ま、平和な時を経れば馬鹿も生まれるわね。
ちなみにその時の奴隷は人間も言わずもがな亜人や他種族も多かった。
特にエルフやドワーフといった人も多かったそう。
獣人もだね。
そうして奴隷撤廃…にはならずとも不当に人種が違っても虐げないようにしたのがレイナード王なのだ。
だから貴族にもエルフはいるしドワーフもいるし、なんなら魔族もいる。
何故かって?
魔王ってのは随分選民主義だったようで、戦う意志のない魔族をも虐殺していて。
実は大きな運河を隔てて魔族の国の一つがあった。
そこの魔王は魔王軍に入るまいと必死で戦っていた。
人間と魔王軍と。
それに目をつけたレイナード王は戦力強化も見込んで助けたのだ。
元々王というのも称号で魔王と出たからやってたと魔族には伝わっているらしい。
そんなこんなで魔族すら加えて国を整え魔王軍と猛攻し、勇者以外で勝利を収めたというのが我が国ともう一つ、ランドル帝国だ。
帝国は海を隔てた隣の大陸にある超大国。
その時に友好を結んでからはずっと友好国ね。
ちなみに主要な大人達は現在その帝国の皇帝にようやくお后様が迎えられたからお祝いに行ってるのよね。
こればかりは友好国筆頭だから国王陛下を始め様々な役職の人が出向かなくてはいけないから軒並み居ないのだ。
…お、いい事考えた。
まだまだ期間はある。
ならいっそ自分で報告しに行くのも手ね。
お父様、実は外務大臣なのよね。
だから昔は良く家族で外国に沢山行っていた。
元々赤ん坊から意識は前世のままだったから3歳にして上級魔術を使うほど魔力を上げている。

「…と、なれば。さっさと冒険者服を整えて個人的にお祝いしに行ってあげましょ!あの仏頂面を籠絡したお方にご挨拶しなくちゃ!」

外務大臣故に主要友好国には何度も行っていた。
外国の国王や上層にも知り合いは多いからね!

「お父様が居ると反対ばかりされるからここぞとばかりに好きにさせてもーらお!」


まぁ気に入られるのには色々やらなくちゃいけない。
例えば討伐困難な魔物を一人で討伐するとか、魔道具を作って国に貢献するとか、国にとって良くない異物を排除するとか。
それら全部やってしまったからわたくしはただアールスローム王国の外務大臣の娘というだけの地位ではないのだ。

「おい!聞いたか!?」
「なんだよ…」
「レティシア・クロノワール様が婚約者の愛人を虐めたっつって追放させられたらしい!!」
「「「はぁ!?」」」
「なにをそんな馬鹿な…レティシア様は平民の為にも動いて下さるお貴族様だよ?」
「そうなんだけど!ほら!!」
「「「うわ…新聞に載ってる…」」」
「こりゃ早く国王陛下方がお戻りになってくださらなきゃ…」
「レティシア様がそんな事するもんかい!」
「…というか普通に考えて愛人作る方が悪くない?」
「いや、そもそも。魔道具作りに魔物討伐に、外交までやる方がそんな暇…あるの?」
「「「「なるほど、この公爵家令息ってのは馬鹿なんだな。」」」」
「あんた達、ホントの事だろうけど口には気をつけな。」

ほらね。
わたくしの輝かしい功績は平民すら知ってるんだから。

「そうね。せめて宰相閣下がお戻りになられるまでは慎んだ方が良くてよ?」
「「「「「「レティシア様!?」」」」」」
「その、権力が高くて頭が「まとも」な方々を呼び戻してくるわ。それまでは、ね?…まだ新聞社はまともで結構。」

レティシア・クロノワール伯爵令嬢、不当な無実の罪で追放される!
って見出しね。
まぁ新聞社って貴族がやってるしね。

「レティシア様…」
「その間、皆さんには悪いけれど少し不便を強いるわ。ごめんなさいね?」
「いえ!皆に話しておきます!!」
「まぁこの記事見たら分かるだろうけどな…」

魔道具は。
造り手が権限を奪えば使えなくなる。

わたくしが国から出た時に維持する為の魔力を切ってしまえば国の殆どの「公共魔道具」は使い物にならなくなる。
新聞がこうしてすぐに出たという事は。
もう国中が知ってるって事。
なら、これは早く行かなきゃね。
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