□異世界転生
1ページ/2ページ

ある日突然。
異世界の神の元に召喚された。
神曰く、特に今は何もない世界なのだが、魔族と敵対する人間達が少なからずおり、その内の国の幾つかが必要もないのに召喚の儀を行って引き寄せられたらしい。
こうなると神と言えど簡単に地球に返すことが出来ない。
その為、最大限の手厚い保証…つまりあちらで優位になれるようスキルやらを頂き、転移ではなく半転生という形を取る、と。
あちらでの成人は15歳。
それとあちらの世界に馴染むような身体になるとの事。
それぞれ欲しいものを答えていく。
ここに来たのは六人。
皆やっぱり魔術とか剣とか憧れるんだね。

『あなたは?』
「んー…そうですね…私何かを作る事が好きなんです。まぁ魔術も使いたいけど…」
『ふむ。ならば先の方達と同じように魔術資質を与えましょう。』
「ありがとうございます。」
『何か悩んでいるのですか?』
「ええと…具体的にどんなスキルがあるとか分からなくて…」
『ふむ…作る事が好きなのですか?』
「作る…というか、細かい作業とかが好きですね。料理とか、刺繍とか、編み物とか。」
『あなたのご職業は?』
「…介護士ですね。昔は医者なんか憧れてましたけど学校に入れる頭じゃ無かったし…」
『ふむ。好きな物を教えて下さい。』
「宝石とか貴金属も好きですね。ああ、機械弄りも好きかな?読書も好きだし…園芸も好きですね。外で走り回るのも好きかな。ああ、弓道も好きだったな。知識を得る事も好きですね。ああ、それと人形を作るのも好きかも。最近球体関節人形を作ってドレスを作る事にハマってたかな。動物の世話とかも好きだね。」
『なるほど。大体掴めました。大丈夫です。ああ、それと…』
「?」
『あなただけは、召喚された国から追い出されるでしょう。』

は!?

『大丈夫ですよ。追い出され、向かう先はあなたにとってとても良い国です。城から追い出され、差し伸べられた手を掴んで下さい。その人が、あなたを導く人間です。』

は、はぁ…

『では、人生を楽しんで。』

視界が暗転する。
硬い床に座り込んだ感触に目を開けると、漫画などで見るあの光景だった。

「おお!!六人もの召喚を成功させたか!」

おお…
そしてあっという間に始まった鑑定。
訳が分からないままステータスを見られる。

「…終わりました。」
「結果は?」
「…この方とこの方は要りません。戦う力を持っていませんから。」
「…ならば、追い出せ。」

と、私ともう一人の男性が引き摺りだされ、放り出される。

「…ええと…」
「おお…女神様の言った通り商人は放り出されたな…」
「商人?」
「ん?ああ、俺元々色んな物を扱う雑貨屋やりたかったんだよ。旅もしてみたかったから…戦える商人にって。あんたは?」
「いまいち職業は分かりませんから好きな物とか好きな事を…」
「へぇ?」
「君達。」
「「っ!」」
「ああ、大丈夫。身構えないでくれ。私はウィルヴェルト。ウィルヴェルト・クロフォードという。…先程王の傍にいたオラクルの髪の長い男性を覚えているかい?」

そう言えばいたかも?
分からないままあれよあれよだったから…

「うん、だろうね。私もそこに居たんだ。その人は宰相でね。私の父だ。…突然この世界に連れてきてしまって申し訳ない…」
「い、いえ!」
「それは、別に…確かに驚いたけど…」
「…ここではなんだから、落ち着いて話せる場所に行こう。付いてきてくれ。」

差し伸べられた手…この事かな?
とりあえずついて行こう。
来たのはカフェ。
しかし紅茶しかない。

あれ、読める?

「女神様の保証の1つ、らしいぜ。会話と文字に苦労しないようにってさ。」
「ああ…」
「それで…話なんだが。…君達のステータスは?」
「えと…」
「…俺達の世界に魔力はない。」
「なるほど。なら、ステータス、オープンと唱えてみてくれ。」

言われた通りにする。
出たステータスには…

「「っ!?」」
「?どうかしたかい?」
「名前…」
「名前が変わってる…」
「え?」

名前レティシア…

「ふむ…この世界に馴染むよう女神様の御力なのかもしれないな。」
「「あぁ…」」

納得してしまった。
種族は人間のままだ。

「そこの、職業の欄を聞かせて欲しい。」
「職業?…俺は…剣士と商人だ。」
「私は………っ!?」
「?」
「え、ええと…多…」
「そんなに多いのか?」
「あ、うん…」

ま、まぁ言われた通りにしよう。

「弓術士、魔術師、裁縫師、料理人、彫金師、薬師、医師、庭師…」
「多…」
「…」
「それから…」
「まだあるのか…」
「錬金術師、聖女…」
「っ!!?」
「は?聖女?」
「って…書いてる…」
「なるほど。城の人間が、王が無能なのはよく分かったな。」
「「っ!?」」

爽やかな笑顔で黒い言葉が出たよ…

「この国はもう傾いている。宰相である父が手を回して持っているようなものだが…鑑定師も恐らく戦闘職ではないものだけしか見れなかったんだろう。」
「え、それ鑑定大丈夫なのか?」
「それだけこの国がもう危ないって事なんだ。…宰相…我が父含めた我が家は、とある国に出奔する事が決まっている。出立は明日。この国はもう終わる…」

そんな…

「既にこの国を見限った貴族や民は出奔の準備を始めているんだ。行先は少し遠い。あそこに残された彼等には申し訳ないが…せめて君達だけでも一緒に来て欲しい。」
「…そこは大丈夫なのか?」
「ああ。とりあえず…その服装からなんとかしよう。我が屋敷にて準備を整えよう。」

こうして、私は異世界に来た。
隠れながら行動するというのもしんどかったが、そこで見た荒廃した様を見る方がしんどかった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ