□異世界転生
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『さぁ今年もやってきましたゴンドラレース!今年は遂に領主様がお戻りになり、指揮を取られておいでです!!』
『うむ。皆の奮闘を期待するぞ。』
『そして今年からはレースを盛り上げる為!拡声魔道具を使用してのお送りとなります!』

頑張って作った。
至る所にモニターと、カメラと、そして拡声スピーカーとマイク。
魔力伸びてきて、遂に人工魔石をアレさんと領主様指導の元錬金術を学んだ結果である。

『それでは!ゴンドラレース…』
『スタートじゃ!!』

出だしから好調だね。

「おばあちゃん!お母さん一番!」
「あらまぁ!あの子ったら凄いわねぇ!」
「まぁ昔からリオスと走り回れるくらい活発だったもんなぁ。」
「でうー!」
『ほほう、中々素晴らしいレーサーがおるのぉ。』
『そうですね!ぶっちぎり一位を走っているのは現在領主様御一家の侍医を任された薬師マルグレーテの弟子のマリシアナ!彼女の笑顔には誰にも逆らえません!!』
「「「「うんうん。」」」」

まぁお母さん怒ったら笑顔の圧が凄いもんな。

『ちなみに第二位を走ってるのはマリシアナの夫であり街を護ってくれているシルバラーン騎士団第一部隊副隊長のリオスです!夫婦で賞金を狙って出やがりました!!』

オットーさんの実況も花が咲いてるねぇ。

で。

『ゴォーーーーール!!素晴らしいデッドヒートを制したのはー!リオスだぁぁぁ!!!』
「お父さん凄ーーーい!!」
「だぅーーー!!」
「勝敗を分けたのはあの咄嗟の判断だったね。」
「ふふっそうねぇ。」

お父さん優勝しちゃった!

『では表彰です!優勝者には賞金とトロフィー、そしてなんと今年は領主様がご用意してくださった「古代の石版」です!』

なにそれ?

『ちなみにこの古代の石版、読みとかなくては何が書いてあるか全く分かりません!』
『なんでそんなもん優勝の品に…』
『書いてあるのは古代の料理レシピじゃ。まぁレプリカじゃがの。これは大昔、ここから東にある遺跡ダンジョンがまだ生活の場だった頃に作られたとされるものでの。色々変化して…今はこの街お馴染みのクストゥになったと言われておる。』

え、そうなの?

「屋敷にはこの辺りの歴史の物が沢山残されているのよ。」
「クストゥって?」
「魚を煮込む料理。ホロホロでぇ、まったりとしつつも爽やかな味でぇ…ごちそう!」
「ふふっそうねぇ。夏でも食べられる煮込みとしてここではポピュラーな料理なのよ。お祭りや、催事の時の定番ね。」
「うん!」
「それも造り手の創意工夫がされていて味が違うのよ。」

ゴンドラレースの時は通路の至る所に出店が出る。
大きな領地を囲む塀は雨季の時は大事な外に繋がる通路になる。
まぁ引く時だけだけど。
一応冒険者の為に浮き道っていうふよふよ浮いてる道はあるけど歩行しにくいんだよね。
一度でもここに来ないと雨季の時は家があるって気付かれないくらい水に沈むし。
だから平民の家でも三階建てなのだ。
それくらい水に沈む。

「水に沈んだ街というのも面白いな。」
「ね。泳ぐのは楽しいけどちょっと寒かったね。」
「気温はそこまで高くないからねぇ。王都に比べたらまだ涼しい所よね。」
「だね。」

水が引き切ると本格的な夏だ。
が。
夏でも大体高くて30度前後。
前世の温暖化に比べれば随分マシよね。
ここから一日ごとに水位が下がっていく。
しかし、その夏に一大イベントが控えている。

「夏の洗礼祭ね。」
「「洗礼祭?」」
「ここで活発に外に出れるのは雪解け後の春か、水位が下がった夏と秋だけ。春と秋はそれぞれお祭りを設けているから、何も無かった夏に洗礼を始めて…そこからお祭りにしたとされているわ。王都では洗礼式は冬だけど、この景色は一面雪に変わるのよ。」
「「へぇー…」」
「外を出歩けもしないから、洗礼を夏場にしているの。」
「…冬場の買い物とかどうしてるの?」
「ん?冬場だけは地下街が開くよ。雨季の時は入り込んでるから、秋の終わりくらいに地下街の掃除して、冬場は地下で生活するの。地下は雪解け水と雨季の水の排水が目的で作られたものだけどね。だからどこの家にも地下街用の入り口もあるんだよ。雨季の時は水が流れてる。」
「「へぇ!」」

雪の場合は流れ込まないから領地の外に行きやすい。
その為寒い時期にしか出ない魔物討伐の為に冒険者が結構来る。
冬場の地下街の方が賑わうかも。

「それを代々広げて維持して来たのはクロフォードなのよ。」
「地下街の方が領主様のやってきた色々なものが残されてるんだって。」
「へぇー!!」
「そうか…ご先祖様の…」
「だけではないわ。この地に残ったクロフォード家の者皆全てが携わっているのです。女はどうしても貴族の繋がりの為の婚姻を結ばなくてはならないから出るけどね…出来るならわたくしもこの地に残りたかったわ。」
「おばあちゃん…」
「まぁでも。こんなに可愛い孫が生まれたのだもの。出て良かったわね!…お姉様の所の孫は可愛げがないけれど。」

お姉様…大伯母様って事?

「ああ、レティは知らなかったよね。今の王家は親戚なんだよ。」
「ぬ!?」
「王太后、つまり先代王妃様というのがお爺様の妹なんだ。まだまだお元気で…」

あれ?つまり…

「お母さんっていとこと婚約してたってこと?」
「まぁそうなるわね。血統がやや近すぎて反対意見が多かったの。それを先々代国王陛下がお許しになられたからあんな…」
「「「…」」」
「まあまあ。今は、マシだろう?」
「ええ、そうね。」

おばあちゃんがダークになった。
というか先々代国王は強い?

「とんでもない!だけどね、どんな凡愚でも国王になってしまえば無理も道理になってしまうということなんだよ。お前達はちゃんと見極め考え、行動しなさい。」
「まぁ当たり前の事だよね。」
「そうだな。」
「そうだよねー。」
「うんうん。」

この後は食べ歩きを楽しんだ。
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