□転生令嬢
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「志願者は集まったな?」

ここは王城。
先日、隣国との戦に勝った我が国は領土を広げた。
隣国をそのまま我が領土にしたのだ。
そして、通達されたのは新たな領主を選定する試験。
腐った家から脱却する為にはこれしかないと、単身乗り込んできた。

「ねぇあれレティシア嬢じゃない?」
「社交界の嫌われ者がどの面下げて…」

あのねぇ…
そもそもわたくしに流れる噂というのはわたくしをいじめ抜きたい兄と姉、それから母親の流したデマである。
ああ、ちなみに目立ちたい兄もいるけど敵では無いわね。

「…レティシア嬢か。」

国王陛下は面白そうに見ておられるわね。

さて、掲示されたものは三つ。
隣国では主流だった作物の育成。
それから民の育成。
それと隣国の調査…ねぇ…
それ全部出来るわよね。
まぁ、良いわ。

「そなたは何をする?」
「わたくしは…このザンジーの育成を致します。」

ザワつく。
ザンジーは隣国の一番有名な甘くて美味しい果物だ。
分類は木。
だが、隣国でも育成は難しく、限定された地域で唯一栽培が成功した貴重なものだ。
見た目は前世の黄色いプチトマトね。

「ほほう。ワシの競合相手がレティシア嬢とはのぉ。」
「おほほほほほ!お父様に勝てるものなどおりませんわ!しかも男にだらしの無い浪費家の悪女なんかに!!」
「…」

国王陛下が一瞬呆れた表情をした。
現在のわたくし、平民でも着れる簡素なドレス。
つまり浪費家とはかけ離れている。
ちなみに今までもとても簡素なドレスばかり。
その風聞に相応しい身なりはお姉様だけ。
使用人に手を上げる?それはお兄様とお姉様。
ああ、あとお母様ね。

「…そなたの付き人は…」
「我が家の家令と侍女長になります。」
「っ!?」
「ほう?」
「陛下。今ここで噂にある渦中のお方はお嬢様ではないとだけ申し上げさせて頂きます。」
「うむ。その様だな。」

ちなみにお母様達にやられた使用人全てに独学で培った製薬で(毒を盛られるから学んだ)治して来たからね。
デビュタント前には魔術師と薬師と錬金術師、そして派生職の医師を獲得している。
そんな訳で裏で使用人には嫌われていないのだ。
まぁドレスもしっかりとしたものは自分で揃えられるんだけどね。
ちなみに。
お父様は全く家の中のことを知りません。
そもそも帰ってくるのが少ない外交官でも友好国を巡る外交官だからだ。
帰ってきてすぐに友好国とのやり取りの為に出なくてはいけない。
だから知る由もないのだろう。
とはいえ、使用人達のお陰で色々知ってはいるんだけど。

このザンジーというのはお父様から聞いていた。
子供の頃はお父様と使用人だけが話し相手だった。

ザンジーの苗を幾つか。
めんどくさいので亜空間に入れ込んでおく。
それだけでザワつくんだから面白いわよね。

「レ、レティシア?今お前何を…」
「あら、お兄様。ああ、お兄様はお知りになりませんでしたけど、わたくし産まれた時から色々属性を持っておりますの。」
「…な、に…?」
「無能無能と繰り返し仰られますが…わたくしからすれば無能はお兄様とお姉様でしてよ?5歳を過ぎても何の属性もスキルも発現しないお二人だもの。」
「っ!!」
「憂さ晴らしにわたくしや使用人に手を上げるのはもうおやめ下さいましね?まぁそもそも今日をもって使用人など屋敷から消えるでしょうけれど。」
「どういうことだ!!」
「ローウェン、お兄様にご説明してあげて?」
「はい。今までの奥様や坊ちゃん方の暴言や暴力に耐え兼ねて、わたくし含めた全ての使用人は既に旦那様へ暇乞いをさせて頂いております。」
「なに!?しかしお前らは屋敷に…」
「ええ。そもそもわたくし共の雇い主は旦那様ですからね。旦那様のご指示にてレティシアお嬢様を御守りする為に残っておりました。旦那様からは、レティシアお嬢様が屋敷を離れるなら共に行けというご命令を全使用人に下しております。」
「今日を持って、わたくし屋敷から離れますの。ではごきげんよう。」

お兄様を無視し、国王陛下のみにカーテシーをとる。
完璧な体勢でね。
やはり面白そうに笑っておられる。
そもそもわたくしの令嬢マナーレッスンは…

「ふふっレティ。素晴らしいカーテシーよ。」
「100点満点ね。」
「王妃様とクロフォード公爵夫人だ…」
「あのお二人がレティシア嬢に笑っている?」
「どういう事だ?」
「では王妃様、ユフィ夫人。行ってまいります。」
「ええ、あなたの事だから素晴らしい成果を見せてくれるでしょうね。」
「待っていてよ。」
「うむ。まぁ早めに戻って来ると良い。」
「宰相閣下まで…」
「どうなってるんだ?」
「ふん…噂に踊らされるとは情けない。」

そもそもこっそり屋敷は抜けでていた。
薬草とか集める為にね。
で、そんな時。
たまたま「大自然の中でのお茶会」を敢行した馬鹿な侯爵夫人がいて。
浅い知識をひけらかし、結果呼ばれていた王妃様や夫人達が毒を摂取するという事態になった。
特にその日は部下のお茶会という事でクロフォード公爵夫妻も参加していた。
全員解毒し、中には慢性的な病持ちもいて診察及び薬を調合したのだ。
その場にいた全員は快癒し、そしてわたくしは高位貴族の夫人、クロフォード公爵家、そして王妃様の侍医の地位を確立させた。
お給金が出ますからね。
そしてそれを知ったローウェンがお父様に秘密裏に手紙で報告し、お父様はタウンハウスを一つお買いになられた。
今日からそっち。
ちなみにうちは伯爵家でもお父様が手広く(外交官なので輸入物はすぐに扱えるため)カフェや産業を行っておりますので裕福なのだ。
そう、裕福なのだうちは。
なのにデビュタントのドレスが貧相なのはおかしい。
お姉様はゴテゴテと着飾ってデビュタントも迎え今も着飾っている。
お母様もだ。
まぁお兄様もね。
今日も昼間だというのに夜会なみに着飾っているものね。

「では、早速行ってまいりますわ。」
「うむ。」
「行ってらっしゃい。」

侍医として呼ばれ、マナーレッスンをされた訳です。
普段令嬢の取り巻きを作らないクロフォード公爵夫人。
唯一侍ることを許されたのはわたくしだけなのだ。
ここから転移でローウェン達と新しい屋敷に。
既に整備が終わっているわね。

「…皆、今までありがとう。」
「何を仰います。これからですぞ。」
「そうね。」
「あ、お姉様!お帰りなさい!」
「ただいまカリス。」

わたくし現在15歳。
デビュタントを今年の春迎えた成人したての令嬢です。
この子は弟のカリス。
同じようにお母様達から不遇されていた。
現在13歳よ。

「さて、それじゃ我慢することはもう終わりよ。」
「うん!」

ちなみにカリスはローウェンから我が家クロノワールの、そしてクロフォード公爵直々に当主としてのアレコレを学んでいる。
そもそもお父様も宰相派だからね。
さて、それでは課題の方をやっていきましょう!
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