□転生令嬢
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わたくし、レティシア。
魔力のある世界に転生してきた元地球人。
転生してきた時はとても嬉しかった。
なんせ貴族だし、両親は美人だし、伯爵家だし。
ただ、成長するにつれ、何故か三人の姉から虐められるようになり。
先日はなにか誤解されているのか身の覚えのない事でお父様から叱責された。
お母様も何故か冷たい目で見てくる。
そういう時ほど姉達は笑っているのだが。
ぷちっと来ましたので、というかわたくしだけカビの生えたパン出されたので家出してやりました。
幸い10歳。
冒険者登録は出来る。
世界を学ぶ内に世界に飛び出す事が憧れとなった。

姉達が無い事を言いふらしているのか、先日成立した婚約の相手…婚約者も睨んできたし。

とはいえ屋敷の外に出たのが初めてなのでギルドの場所が分からずウロウロしてしまった。
俗に言う迷子というやつ。
困った…

「なにか困り事かい?」

振り返るとやけに美しいお兄さん。
この人絶対貴族だ。

「…、冒険者ギルドに行きたくて…迷ってます…」
「おや?…君は貴族の子じゃないのかな?」
「え?」
「だってそのドレスは貴族しか利用しないメゾンのものだろう?だいぶくたびれているけど。…そんな困窮しているような家があったか?」
「…」

ふむ。
ここらで大人の味方は必要かもね。
味方になってくれるのではなく真実を知る貴族の大人が。

「困窮はしていません。わたくし家族から虐げられてるだけなので。」
「…へぇ?」
「今日全く知らない事でお父様から怒られたの。多分三人の姉がなんかしてるんだと思うの。お茶会にも行ったことないのにお茶会での失態を怒られたんだよね…」
「…なるほど?」
「常に侍女なんていないから全部自分でやってるし…」

そもそも前世の記憶あるから大丈夫だし。

「だから自分で稼いで暮らすことにしたの。人の言うことばっかり信じるお父様もお母様にも期待してないし。何故か虐めてくるお姉様達も、それに従う使用人も必要ないし。」
「なるほどなるほど。だから屋敷を飛び出して…迷子かい?」
「…屋敷から出た事無かったから…」
「なるほどね。…けどこのままじゃギルドでも貴族の子供と分かるから受け付けてくれないかもしれないね?」

なに!?

「平民と貴族の軋轢だよ…全く嘆かわしいがね。」
「…なら、ボロボロでもこのドレス売って平民の服買えないかな?」
「…ふぅん?…」

ん?

「ちょっと興味湧いたな。それに関しては手助けしてあげよう。」
「え、良いんですか?」
「ああ、良いとも。自分から動ける子は嫌いじゃないからね。おいで。せめて駆け出し冒険者の手伝いくらいはしてあげないとね。」

こうしてわたくしは謎の美人さんの手を借りれることになりました。

「家出というが、なにかして来たのかい?」
「んー…ああ、今までの事を壁にいっぱい書いてきた。最後に「家族に愛されないのなら死ぬ」って。物が無かったから魔力で焼いて書いたからお姉様達でも消せないしねー。」
「ぶふっ…死ぬ気はないのに?」
「…心が弱ってたらそれくらいの事を皆したんだよね。全くわたくしを見てくれないお父様とお母様にも何かしらしないと。あ、侍女が来なくなった日時も全部書いてあるんだ。壁は日記だからね!」
「ぶふっ…君中々面白いね?魔力でというのも…中々いない。」
「そう?貴族なら魔力は高いから出来るんじゃないんですか?」
「それが、そうでも無いんだよ。まぁ俺は出来るだろうけど。」
「ふぅん…」

なるほど、謎のお兄さんは魔力が高いと。

「ふむ。知れば知るほど面白いね。良いね、俄然興味が尽きない。面白そうだからわりと凄い手助けまでしてあげよう。」
「?」
「そうだね。今の君に必要なのはギルドで冒険者登録…の前に、住む場所かな。定住している所がないと冒険者登録は出来ないんだよ。」

なんと!!

「そんな…」
「だからね。…ここだ。」

なに、ここ?

「まぁいわゆる不動産屋というやつだね。失礼。」
「はい、いらっしゃいませ。」

え、え?

「どういった家をお求めですか?」
「そうだねぇ…ギルドに近い所で、でも入り組んでいて簡単に着けないような場所、はあるかい?なにぶん私費で、だからね?」
「っ!?」
「住むのはこの子だからね。」

え?わたくし?

「住む場所を与えてあげよう。援助というものだよ。まぁその分俺のお願いを聞いてもらわなきゃだけど。たまーに遊びに行くのに隠れ家あった方が俺も嬉しいからねぇ。」
「は、はぁ…」
「で、でしたらば…候補は三件ほど…」
「ああ、出来れば一軒家がいいかな。」
「…こちらに。」

さっきから担当さん凄い冷や汗出てない?

「お、ここは良いね。ギルドにも職人街にも市場にも近くて入り組んでいる。集合住宅地の中の小さな一軒家か。」
「はい。ご提示出来ます家はこれくらいでしょう。」
「うん、ならここにしよう。へぇ?小さいけど庭付きなんだ?」
「はい。前に住んでいた方が魔術師だったようで周りから見れないのです。そういう特殊魔術が掛かっておりました。解除が出来ていませんから…周りがアパルトマンで囲まれているのに、近隣からは庭があるとは思われていません。」
「へぇ。」
「手入れなどはしておりませんから、庭は少々凄いことにはなっておりますが…」
「構わないよ。」

面白いな。
アパルトマンって確か三階か四階建てのマンションみたいなのだ。
正面から見て、後ろも横もアパルトマン。
囲まれてる。

鍵を貰って、そのまま向かう。

「へぇ、面白い。鍵を持たなきゃたどり着けないようになってるね。」
「はい。」
「人が入ると、その所有者と居住者が許可しないと来れないタイプだ。前の持ち主は随分と人嫌いだったようだね。」

謎のお兄さんは随分そういう事に目敏いんだな。
で、中を確認した後、お兄さんの部屋とわたくしの部屋を決めた後、平民が買える範囲の古着屋で平民のまだ見栄えがいい物を買って、家具類も買っていた。
一瞬で物が溢れた。

「…」
「どうしたんだい?」
「…クローゼットとキャビネットに自分の服がこんなにあるの初めて…」
「だろうね。あ。そうだ。」
「?」
「ここまでやっておいて、名乗らないってのもおかしな話だね。君のお名前は?」
「レティシアです。」
「レティシアか。いい名前だね。俺はフィアンだよ。」

躊躇いなく言ったけど多分偽名とかそんなのだろうな。

「フィアンさん。」
「よろしくね。さて、まずは着替えておいで。」
「はい。」

もう一度クローゼットとキャビネットを見る。
どれも使い古したものだが、まだまだ着れる範囲だ。
簡単にロングTシャツにスカート、ブーツ。
それを着てまた1階に戻る。

「…フィアンさんも着替えたの?」
「まぁ見てわかる通り、俺も貴族って分かるだろうからね。」
「…うん、着替えた意味無いくらい分かる。」
「全く。母上の美しさを受け継いだのも問題だな。」

あ、そう。
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